零 12
零 の第十二話です。
私が撃たれてからしばらく経った。私は元々体は強い方で、どんどん回復していった。
久し振りに自分で立った日、零がにこやかに話しかけてきた。
熱でもあるんじゃないの……?
「愛、この前ストーカー被害にあっていないか聞いたよな」
「あ、それずっと気になってた。今回の件に関係あるんでしょ?」
「ああ。お前を撃った犯人を捕まえたんだが、」
零は真面目な顔になる。
「あいつは、お前の電話番号、メアド、住所、クレカの暗証番号まで知っていたんだ」
「え……」
「しかも、俺と共に暮らしていることもな。動機を聞いたら、『許せなかった。お前ら二人とも。どうせならお前からやりたかった。』だそうだ。」
「え…。私達、殺されるようなことした?」
「さあな」
「てゆ~か犯人キモすぎでしょ。そんな情報、どこで手に入れたんだか」
「…ああ。あ、あと、もう一つ聞きたいことがある」
「何?」
「その_。間違っていたら、申し訳ないんだが、俺達、は。
__俺達は兄妹、なのか?」
一瞬、時が止まる。
先に口を開いたのは私だった。
「なんでそう思ったの?」
「犯人がそう言っていた_。あとは、なんとなく」
空調の音だけが部屋に響く。長くて短い、気まずい瞬間だった。
「そっかぁ。ついに、零にもバレちゃったかぁ」
零の顔が少し明るくなる。
「愛衣音、」
「なあに?お兄ちゃん!」
気付けばもう夕暮れ。私は零と沢山のことを話した。
「何で妹であることを早く言わなかった?」
「え! その内気気付くと思ってたもん。全っ然気付いてくれないお兄ちゃんが悪い」
「気付かねえよ。あのなあ、苗字を母方のものにして、下の名前まで変えて、ましてや少し整形までしてたら気付かねえもんだ。髪も短えし。似てるなと思ったとしても他人の空似だと思うわ」
「そんなものなのかなぁ」
「そういうもん。というか、何で改名したんだ?」
「いや、深い意味はないよ。ただ、家出したってことで少しけじめをつけたかっただけ」
「そうか」
「驚いた?」
「ああ。人生の中でもトップクラスでな」
そう言う零の顔はとても嬉しそうだった。
「しくじって捕まっちまった。殺し損ねたらしいし、復讐は失敗だな。_ならもう生きる意味はないか。」
銃口を自分に突きつけて、引き金を引いた。
次回もお楽しみに。