零 11
零 の第十一話です。
「うわぁ~、今日も暑~い」
外に出て、思わず呟いた。
もう10月に入ったというのに、まだまだ30度を越える日が続いている。
私が一週間行方えをくらませたことがきっかけで、零は私に散歩はできるだけするな、どうしてもするならせめてサングラスとマスクを着けろ、なんて言ってくる。
シスコンか? …いや、あっちは私が妹だって気付いてないのか。
ま、私に散歩をするな、なんて無理な話だよ。
それにマスクなんて着けたら熱中症で死んじゃうし。
「サングラスかけたって、普通に私だって分かるでしょ。まったく、過保護よね~」
試行錯誤してもバレるなら、いっそのことしない。それが私のモットーだ。
色々考えつつ近所をブラついていると、木の上から微かに音がした。
動物が通ったとしてもありえない、金属の音だった。
「誰かいるの?」
と、問いかけてみた。
反応はない。
気のせいだったかもしれないと思い、警戒はしつつもその場を離れようとしたその時。
「バーン」という銃声と共に、腕に激痛が走った。
「っっ…!!」
狙われている。誰かが、私を殺そうとしている。
血塗れの右腕をおさえながら、木の上を見上げる。逆光で顔は見えなかったが、誰かがこちらに銃口を向けている。
これじゃ、避けられない。
木の上にいる人間は再びこちらに狙いを定める。
あ、終わった。
覚悟を決めて目を瞑った。
意識が途切れた。
「…い。あい!愛!!!」
男性の声で目が覚めた。
目の前には涙で顔がぐしゃぐしゃになっている零がいる。
「れ…い?」
口に付いている呼吸器のせいで上手く喋れない。
というか、私、生きてる?
「よかったぁ。生きてたんだな」
零が嬉しそうに涙を流す。
零は何で私が病院にいて、生きているのか教えてくれた。
銃声が聞こえたので、急いで外に出たら私が倒れていたこと。
急いで救急車を呼んで、私は何時間も集中治療室にいたこと。
三日間意識不明だったこと。
全部聞いて、私は号泣した。
零はもっと泣いていた。
「とりあえず、しばらくは入院になるそうだ」
「だよね~」
「愛。こんな状態で申し訳ないんだが、聞きたいことがある」
「何?」
「最近、ストーカー被害にあったりしていないか?」
「…いいや。多分ない」
「そうか」
零は渋い顔で何かを考え始める。
「ストーカーと今回の件、関係あるの?」
「まあな。だが、その件はお前が元気になったら話そう。」
「は~い」
零が帰ってから、私は再び泣いた。
生きていて、良かった
零が来てくれて、良かった
次回もお楽しみに。