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  作者: 十月志歩
10/20

零 10

零 の第十話です。

零と私は兄妹だ。誰にも言っていないはずだった。零だって気付いていない。

でも、あの男は知っていた。

不気味に黒いあの目が、忘れられない。

どこかで見たことがあるような、あの目が。


「結局、この前お前は何をしてたんだ?」

零が聞いてきた。

「ひ、み、つ!」

「お前なあ」

零が呆れたような声を出す。

「言いたくないものは言いたくないんだも~ん」

なんとなく、零にはあいつの存在を知られてはいけない気がした。それに、これ以上心配をかけたくない。

「…ねえ零」

「何だ」

「もし私達が兄妹だって言ったら信じる?」

「お前が俺の妹だということか?」

「いや、もしもの話」

「そうだな」

零は少し考えた後、微笑んでこう言った。

「信じるよ。お前と話してると妹と話してる様な気分になるからな」

「そっかぁ」

「特にアホっぽいところがそっくりだ」

「アホじゃないし」

「本当かよ」

零、いやお兄ちゃん楽しそうだな。と、いうか微笑んでるところなんて久し振りに見た。

なんか昔に戻ったみたい。


ずっと、こんな毎日が続かないかなぁ。



「良かったんですか?あの女を逃がして。」

「良いんだよ。零が死んだなら用はない。」

「そうですか。ですがその割には寂しそうですね。」

「まあ、な。」

「何か隠し事でも?」

「いや。何もない。」



愛が帰ってきてしばらく経った。

俺は愛に変なことを聞かれた。

俺達が兄妹だと言ったら信じるか、と。

始めて会った時、若干雰囲気が妹に似ているなとは思ったが、特に気にしていなかった。

喋り方も、こういう人間はたくさんいるかと思って気にしてこなかった。

聞かれた時は適当に流そうと思っていたのに、俺の唇は本心を話した。

心の隅では本当に妹なのではないかとずっと思っていた。

でも名前が違うじゃないかと考え、悩んだ。


俺の妹の名前は愛衣音、あいつの名前は愛。


違うじゃないか。


……全然、違うじゃないか。


ずっと会いたかった妹が実はすぐ傍にいるなんてこと、こんな世の中では起こり得ない。

起こり得ないはずなんだ。


もしも愛が俺の妹でなかったらそれでいい。

でも、妹であってほしい。


妹が唯一の家族だから。




次回もお楽しみに。

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