初めて、澪里に会った日【side 涼】
俺──涼は、澪里という少女と会うことになった。
凛から澪里のことを聞いて以来、この少女のことが気になって仕方がなかった。無理もない。
凛は毎回、相方になる人間に文句ばかり言う。
『今回のバディは、技術がない』『この人は素質がない』……そんな愚痴を報告のたびに聞かされるのはまだマシだ。任務中に本人に言い放つのだから、頭が痛い。
そのせいで、今まで何人の合格者が辞めていったことか。
凛とのバディは、常に現場の悩みのタネだ。……かといって、彼女は幹部の一人。スパイとしての実力は折り紙付きだ。
そんな凛が、今回は文句を言うどころか褒めた。
冗談なしに空から槍がふるかと思ってしまった。
そう思ったところで、「コンコン」とドアがノックされる。
「ボス、連れて来ました」
「どうぞ」
扉が開き、一人の少女が入ってくる。
(……これが)
書類では見ていたが、実物はさらに幼い印象だった。今も緊張しているのか、ビクビクとした様子で立っている。
(これが……凛が褒めた少女?)
信じられない思いで、少女を凝視する。
そして――
扉が閉まった瞬間、少女の雰囲気がガラリと変わった。
(……っ。プロでも、ここまで一瞬で切り替えるのは難しい……おもしろい)
凛が褒めた理由が、ようやく分かりかけてきた。
◇◇◇◇◇◇
少女が部屋を出た後、涼はぽつりとつぶやいた。
「澪里、か………覚えたぞ」




