池2
(ここからジャンプすれば、簡単に入れそう……。あいつに捕まるぐらいなら……)
そんな考えが頭の中を通り去る。
そんな風に考えたのを、佳奈ちゃんは悟ったのだろう。黙って付いてきた佳奈ちゃんは口を開いた。
「死んじゃう?」
考えを見透かしたことに戸惑いつつ、答える。
「うん……。私は池に飛び込もうかな…。でも、あなたは逃げて。あの人、たちが狙っているのは、たぶん、私だけだから。あなたは多分大丈夫」
こわい……っ。そんな気持ちもある。──……でも、もういいや……。
「いやよ。あなただって怖いでしょ?それに、生きたい何かが見つかりそうだったけど、まだわかんないし、最初の言葉は、一緒にって意味だし。一緒なら怖くないよ! 一緒に行こう?!」
「でも、あなたの人生がっ……」
「大丈夫だから!」
「………うん…最後までありがとう……」
そして……巻き込んで、ごめんね。
最後に、凛にありがとうって言いたかったな………。
私たちは目を合わせて、同じタイミングでジャンプした。
どッすん!
大きな音と共に大きな水しぶきが上がった。
いたい……こわい、なんで、体は浮き上がるのっ……? そんな感情が幾度も無く頭を横切る。
沈むと反対に、体は水面に浮かび上がった。
「ごほ、ごほ。はあはあ、はぁ」
(くるしい……)
死ぬことができなかったことと矛盾するかのように、どこか安心する。
隣でも、同じような乱れた息が聞こえる。
声がした方へふりかえると、
そこには、佳奈ちゃんがいた。
その姿を見えた私は安堵のすえ崩れ落ちそうになったものの、それを無意識に出さないように体が踏ん張った。
スパイの特訓のせいだろうか。