表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/21

提案

「なら、私に協力して欲しいんだけど、頼めるかしら?」


 女の子は興味を持ってくれたようだったが、まだ、迷っているようにも見えた。


 言葉を続ける。


「お願い……っ!お金なら、いくらでも出すわ」


 レンから逃れるためか、最低なことを言ってしまった……。でも、それほど、私は追い詰められていたのだと実感する。


 スパイは自分の個人情報を知られるわけにはいかない。それが、命取りとなってきたスパイは多く見てきた。


「それに、あなたも生きる意味が見つかるかもしれない。もう、あなたしか頼れないの……っ」


 私の状況にうすうす察したのか、女の子は頷いた。


「わかった。私にできることなら……。それに、どっちにしろ、もう捨てようとした命。これをあなたに差し上げる」

「本当にありがとうっ……」


 了承してくれたことに涙を浮かべる。でも、まだ始まりなのだ。


「どんなに礼をいえば……」


 とても嬉しかった。断れても良かったのだ。それでも、助けると言ってくれた女の子には、感謝しきれなかった。


 私は考えたことを女の子に話した。



◇◇◇◇◇◇



 私と女の子は建物の外に出た。

 他の人から見れば、姉妹にしか見えないのだろう。


 それぐらい似ていた。


 二人とも肩まで伸びた髪に、白のワンピース。

 髪色は違うけど、十分姉妹に見えていた。


 そこで、私が先に口を開く。


佳奈(かな)姉様ぁ、早く着きたいですね。おじいちゃん、おばあちゃん()に。私は方向音痴で頼りないですけど、姉様がいれば。力強いです!」


 あの女の子──佳奈ちゃんはそれに応えるように言う。


「もう、甘えん坊ね。もうすぐよ、と言いたいところだけど、もうちょっとかかるかも」

「え〜、もう疲れました……」

「え!? 早くない?」

「私、姉様と違って体力がないんです」


 なんて、たわいない話をしながら、レンの家来の包囲を突破できそうなところまで来た。


 佳奈ちゃん……演技うまい


 ──そう、私の考えは“姉妹のふりををしながら、レンの家来の包囲を突破する”という作戦だったのだ。


 しかし、現実はそう甘くなかった。


 突然、佳奈ちゃんの足が止まったのだ。


 え?と思い、佳奈ちゃんを見る。

 すると、佳奈ちゃんはどこか一点を見つめていた。


「どうしたんですか?お姉様」


 佳奈ちゃんの視線を辿る、と──

 っ……。そこにはレンが居た。


 レンの家来の包囲を突破するときに、どうやら偶然、レンの前を通ってしまったようだ。


 冷や汗が流れる。

 とりあいず、突破を先に越えよう。


「お姉様、行かないんですか?」


 佳奈ちゃんは、はっと我に帰ったように言った。


「そ、そうだね。行きましょう」


 ほっとした瞬間、あの男──レンが声をかけてきた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ