解かされた変装
「何故、私を公爵のレンだと思ったのだい?」
言われて初めて気づく。失敗した……名乗りもしなかったのに。
「申し訳ございません、公爵のレン様で間違えていましたか?」
「いや、合っているよ。私が気になっていたのは、名乗りもしなかったのに何故分かったのかなっておもったんだ」
「はっ、それは警備するに当たって、偉い人も来ると聞かされていました。なので、部下といい、その身だしなみといい、公爵のレン様ではないかと思ったんです」
そこまで言うとレンは「くすくす」と笑い出した。
でも、私は笑われる要素に心当たりがなかった。
「なにか、おかしいことでも?」
「くくく……。先から敬語が崩れてきているよ」
「え?」
意味がわからず間抜けな声が出る。そして、止めを刺すようにレンが言った。
「それに、本当は最初から知っていたくせに」
そう言いながら、レンの手がのびてくる。そして……
━━そして、私のマスクに手を掛けると、一気にマスクごと変装を解かされた。
「っ……」
変装を解かされたと気付いた時にはもう、素顔があらわになっていた。
慌てて顔が見られないように手で隠しながら走り出した。
「ここはよろしく頼んだ」
仲間に警備の場所を任せながら、私は階段の方へ走った。
レンは澪里の後ろ姿を見ながら満足そうに、それでいて意味ありげな笑いを浮かべた。
「にがさないよ」
私に向けられたであろうという声が響き
「階段に言う警備に伝えろ、男装をした女の人を通すな。そして確保しろ」
その後に自分の部下に命令する声が聞こえた。
早く行かなきゃっ