メイド!?
レンは付け足すように言葉をそなえる。
「その女は、試験がある。そして、髪が長い」
男達はその言葉を口にしながら、部屋を歩き回り探した。
「あ、いました」
っ………見つかった!?
「この女で間違いないですか?」
男の言葉を聞きながら、私はどうやって逃げようか、頭をぐるぐる回転させて考えていた。
「間違いない。連れておいで」
レンの声に反応して男達はまた動き出した。
思わず身構える。
しかし、予想していたことは起こらなかった。不思議な事に、男達は私が腹這いになっている所をすれ違って、奥の机に座っていた一人の女の人を連れ出した。
……人がいたんだ。気づかなかった。
肩の力を抜いた。
「うん。その女の人で間違いないよ。そこにいるのは、我が妻になる人の為のメイドだ」
「へ?」
安心した所為だろう。思わず声が出てしまった。
━━それがいけなかった。
「うん?何故そこのお前が声を出しているのだい?」
「申し訳ございません。私たちのなかに、女など今のドアの前に立っている人しか居ないため、女の人が出て来た時は、なぜ?と思ってしまいました。声をあげて申し訳ございません」
床から起き上がりながら、その場で言う言い訳を考える。
「そうか、ちなみに結構しっかりと会話を聞いていたのだね」
「すみません。休憩室に人が入って来ては、びっくりして、聞いていました」
「そうか、なら仕方ないね」
と言ったレンの赤の目から放された眼光は鋭い。
「ところで、気になっていたんだが、何故私を見た瞬間に休憩室に入ったんだい?」
偉い人に質問されては、休憩しながらではいけない。そう思って、私は休憩室を出た。先の女の人の隣に立つ。
「いえ、朝から具合が悪く、しかしながら仕事なので来ていましたが、先ちょうど公爵のレン様が来る時に立ちくらみがして、公爵様の前で倒れては失礼かと思い、休憩に入りました」
レンは「ふ〜ん」と納得しているような納得していないような相槌を打っている。
私からすればレンが納得してない事は一目瞭然だった。