出会い8
どうして……。なんで……私の名前を知っているの?何か言わなきゃっ……。
ピロん、音が重なって聞こえる。音の出所は私と凛のスパイの連絡を取るピアスだった。普通の人には何処にも売っているものだと見えるが、連絡を取る事ができる特殊なピアスだ。
その音も会話も他の人には聞こえない……はずだった。訓練されていなければ……の話だけど。
どうやら、凛にも聞こえたようで、顔を見合わせて二人が同じことを考えていると分かると、頷き合った。
そう━━この音は任務完了や中断の音。鳴ることはほぼないと言われているから、心に止めておいて、と言われただけで必ず覚える必要はないが本当に鳴るとは思わなかった。後はどうやってこの場を立ち去るのかだ。
私は時計を見て慌てたような声を出した。
「いけない……。もう迎えが来る時間ですわ」
そこまで言うと凛は私が考えていることが分かったのか相槌をうつ。
「あら、それは大変!送るわ」
「すみません、レン様。ご挨拶が出来ませんでしたがまた、次にご挨拶させてください」
次があれば……だけど。この時私はも再び会うことはないと思い込んでいた。
何か言いたげなレンを背にして、私と凛は会場を退去した。
あとで聞いた話だけど、実はこの任務、別の意味があったのだ。ある貴族の男が国が禁じている奴隷を捕まえたり、売ったりしていたらしい。
だから、暴くために、犯人と協力しているかもしれないと疑われたレンの動きを見張るという意味だったそうだ。結果的にレンが潔白だと証明されたようだ。
そして、その男は今まさに私の立っている場所の方向に歩いて来ている。
このままだと顔を合わせてバレてしまうかもしれない……。
そんな恐怖にも似た心配事を頭の中で駆け回った。