EP95
「おばちゃん、なんかさ。上品だよね。もしかして……」
やばい。
「おばちゃんなんて歳じゃないかも?」
あっぶな。
「そーんなことないない! もう歳も歳のオバハンやん!! 身体のあちこちにガタきてんけどな、年金じゃ足りねいもんだから、石に齧りついてでも働かんとなあ。食ってくためには仕方がねいのよう!!」←精一杯のおばちゃん像
「そ、そうなんだ……」
「あんたもブラックブラック言っとる場合じゃねいよ。仕事、頑張っておくんなまし」
そこまで言って、私はモップを動かします。
「ふうん。おばちゃんも頑張ってよ。まあ俺は、こんなブラックな会社では、頑張れって言われても頑張れないからテキトーにやらしてもらうよ。人事部なんて、クソの集まりだからな。あれこれ無茶ぶり言う上司に皆んな辟易しちまってる。ま。おばちゃんには直接関係ないからいーけどな」
はははと笑います。
なるほど、そういう……そうでござったか。←おばちゃん像に引きずられている
「おばちゃんも気をつけるで、あんたも身体には十分気をつけてな」
すると、牧野さんは私の顔を覗き込んできて、一瞬ドキっとしてしまいました。
「おばちゃん、美人だなあ」
あらまあ、嬉しいことを。けれど、身バレは厳禁でございます。
と。そこへ。
「あっれー?? 掃除のおばちゃん、役員室のゴミが捨ててなかったって井桁さんが〜〜」
「副社長!!」
牧野さんは、後ろへと後退りしながら、頭を下げた。
「それじゃ、おばちゃんまたな!!」




