EP92
都さんが、お出かけされるようだったので、僕が「どこかに行かれるのですか?」と問うたら、「ちょっとその辺に……もにょもにょ」と。
「そうですか……お帰りは何時で??」
「ちょーっとわからないですけど、ちょーっとそこまで……」
怪しいと思いつつ、承知しましたと納得してしまった。
それがまさか、あんなことになるとは。
*
私、千堂都、つい最近未亡人となりまして、主人の遺した洋菓子メーカー『千堂屋』の会長に就任、忙しい日々を過ごしておりまして。
社長だった主人の後を引き継ぎましても、この『千堂屋』の経営が順調にいっているのは、ひとえに社員の皆さまや取引先の皆さまのおかげ、そして社長に就任しました我が娘、千夏を支えてくださっている、副社長佐久間さん、秘書井桁さんのおかげでございます。
そんな『千堂屋』に大波乱の予感が!!
うちのどこがブラックなのですか!!
その点を明らかにしなくてはとの、使命感に満ち溢れております。
なので、私独自の探りを入れるべく、潜入捜査に参りました。
「奥さま、本当によかったんですか?」
お掃除歴15年、『千堂屋』お掃除界の古参、松原さんに教えを乞い、こうして身を隠して、探りを入れようとしております。




