EP9
イケメンか?
そう問われれば、はいそうですと言いたい。
ハイスペか?
そう問われれば、もちろんYESと答えたい。
そうなのよ。副社長の佐久間飛翔は、その性格も相まって、溢れんばかりのゆるふわでまとまっている。髪は栗色のゆるふわパーマ。背は高く足も長いが、歩くのは普通でかなりゆるふわな動き。だが、そんなゆるふわを自然に魅せる、しゅっとした完璧なモデル体型。
髪と同じく栗色の瞳がこれまた優しさを倍増。鼻は鼻梁がすっと通り、いや通り過ぎてイタリアか! とツッコミたくなるほどで、しかも口元は常にゆるく笑みをたたえている。
って、なんでこんなお方がバームクーヘンなんて売ってるの?
いや芸能人やろ。芸能人枠やろ。
「スカウト? そんなこともあったけどね〜色々揉めちゃって結局……はあ、重いんだよね〜ってかその話はまた今度でいい? は? モデル時代? 僕の彼女たちがケンカになっちゃって……ってその話もまた今度でいい?」
ホストかよ。
なんか武勇伝ありそー。オレかオレ以外か的な名言ありそー。
なんて思っていると。
「社長、いきなりですがこれ、あげま〜す。はい、どうぞー」
渡されたのはざっくり言って売り上げ表。
経営のことは佐久間さんが管理していて、役員室には専用の棚があり、そこから引っ張り出してきた資料を受け取って目を通す。
と。
「あれ? このお店だけ赤字……」
『千堂屋』は本社と工場はこの八千代町だけれど、市内に販売店が3店舗ある。その中で、谷地町販売店・羽田町販売店の2店舗は黒字だけれど(ってか売り上げ金額エグっ庶民には縁遠い数字っ)、松谷町販売店は他の2店舗に比べて売り上げが低い。