EP76
井桁氏は、焼き鳥をすべて平らげると、串を串入れに放り込み、そしてのたまった。
「カワウソだと思ってる。カワウソだよな? うん、カワウソだわ。間違いない!!」
カッチーーーン
「おいぃぃ、井桁あ!! そのカワウソってのは、あんたの上司なんだっっっつの!!」
言ってからしまった! と思った。権力を傘にするなんて、絶対にダメ。パパが生きてたら、「千夏! なにをそんなに偉そうにしているんだ? 社長ってのが、そんなに偉いんか?」って言うだろうな。
私は慌てて、井桁さまに頭を下げた。
「ははーーすみませーーん。上司だなんて、偉ぶってしまって。仕事のことを一から教えていただいている立場で、何を偉そーにってやつですよね。ほんとごめんなさい(u_u)」
すると。
「……可愛い」
私は顔を恐る恐る上げた。
「へ?」
「カワウソ可愛い」
何が何だかわからんが、井桁さん、かなり酔っ払ってる?
「俺が今日!! 飲みに誘ったのは、社長が誰彼構わず愛想を振り撒いてて、なんでそんなことすんだよって思って……そんでよ、それ可愛い過ぎるからやめろって言いたくて、そんでな、モテちまうからやめろって、とにかく」
うーん。完全に酔っ払いだなこれ。
言っていることはまあ、だいたいは正解だけどな。(←さらり肯定する度胸)
「とにかくよ!! カワウソはカワウソらしく大人しく俺のモンになれっつの!!」




