EP70
「どうしよう……」
社長に就任し、販売店の改革に力を入れ、そして本社勤務の方々の働き方改革に着手し、開発部のおかげでヒット商品も生まれた。
母である会長のおかげで商品パッケージをお願いしている山路商会さんとの契約も順調。
順風満帆。
その言葉を地でいくような、なかなかの経営。
「まあ、良いんじゃないでしょうかね? そこそこ。ただ、もっとビシバシいきますからね!」
そこそこ。はい、そこそこね。←2度言う
いただきましたドSな評価中の、そこそこ。井桁さ〜ん、最高です♪
「え〜いげちゃん、えげつなあ〜い。僕はまあまあかなあって思うよ。ビシバシやるならあ、もっと言葉でわかりやすく指示してよう♪ じゃなきゃわかんなーい」
まあまあ。はい、まあまあいただきました!
佐久間さ〜ん、ドMもほどほどにね!
「社長、お客様です!」
トントンとノック。
はい。もちろん知ってます。本日11時より、山路商会さんとの打ち合わせ。
「どうぞ〜」
入ってきたのは、山路商会の社長……ではなく、息子の雅也さんだった。
『失礼します』
手話だ。
『こんにちは、初めまして。私、千堂千夏と申します。いつもお世話になってます』
ママから雅也さんは耳が聞こえないということは聞いていたので、辿々しくも手話で話す。




