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EP7
卒論と並行に、私はまず『千堂屋』の歴史を少しずつ勉強した。
教えてくれるのは、もちろん社長秘書である井桁さん。
井桁さんは社史を始めとした経営の資料を揃えてくれて、とてもわかりやすくまとめてくれている。元は和菓子屋だった父がなぜ、洋菓子など未開の世界へと舵を取り直したか。
そこには深い理由があるようだった。
が。
「まず、合掌させてください」
井桁さんが社史に向かって手を合わせる。なんで?
私も慌てて右に倣え。
手を合わせていると、父との思い出が蘇ってくる。
厳しくも優しい父だった。
「あまりに早過ぎます。先代とは、もっと色んな話がしたかった。俺は悔しくて仕方がないんです」
『私』が『俺』になってる。それくらい、井桁さんは今、父を想って素になってるんだろうな。
「そう思っていただけて娘としては嬉しい限りです。父を慕ってくださってたんですね」
「もちろんですよ。ヤンキーで喧嘩上等ふらふら無職の俺を、大大大抜擢で社長秘書なんかに……」
くっと目を閉じる。ぽたりと涙が机へと落ちた。
元ヤンだったとの噂はほんとだったんだ。汗
父との出会いとか、色々気になるよね〜〜。