EP56
「曲のリクエストありますか? って聞いたらですね。社員さん、結構リクエストくれて。なので、リク曲を募ると同時に、この会社に関するご意見も書いてもらおうと思いまして」
「へえ。良いアイデアじゃないですかあ」
「へへへ」
笑笑してると、佐久間さんが顔をずいっと覗き込んでくる。
イケメン顔が急に近くなって、私はのけぞってしまった。
「うお。どうしたんです?」
佐久間さんは、「なんでもなーい。つまんなーい」と言って、両手でヤレヤレを作ってから役員室から出ていった。
「なんなん? つまんないて。まったく、つかめん人だなあ」
佐久間さんは謎の人だ。その点、ストレートに感情を表す井桁さんの方がわかりやすいのかも知れない。
私は持っていた用紙をコピー機でコピーし、裁断してから、手作り投書箱を抱えて役員室を出た。
そして、ビルの入り口あたりに設置する。
よし。
次の日、出社した際に投書箱を覗き込んだら、さっそくリク用紙が入っていた。
「おお! 入ってる!!」
役員室へと入り、タイムカードを押してから、入っていた紙を広げてみた。
すると。
『リクエストは、〇〇〇〇の〇〇です』
マルマルモリモリ歌いたくなってきたあ♪
ふーん。なるほどね。今の若い子はこういうの聴くんだあ。へえ〜〜 ←おばちゃん気質
「井桁さん、井桁さんはどんな音楽聴くんです?」
「私はハードロックとかメタルとかですかね」
うるさくてそっこー帰りたくなるやつww
「それはいーですねー(°▽°)」←お得意の棒読み
その後、私はリク曲を募りながら、『ちょっとひと言』に記入されている要望に応えるべく、机に向かった。
『彼氏が欲しいのですが、部屋が汚すぎて彼氏を家に呼べません。どうしたらいいでしょうか?』
回答『掃除好きの彼氏をゲット♡』
回答『自分でなんとかするってか、しろ!』
回答『ルンバに任せよ〜』
回答『ダスキ◯のスタッフにお任せする』
(誰の回答かわかります??)
投書箱の上にパネルを作り、これを貼った。
「うーん。どれも他力本願。井桁さんだけ、自力で掃除かあ。やはり自分にも他人にも厳しいお人だ」
うむうむと納得する。




