EP49
「はい。そのつもりでこうして連れまわしているわけですよ。まだまだ私は現役で頑張ろうとは思ってますがね」
「ふふふ。お互いに頑張りましょう」
山路社長も微笑む。
「ところで、山路さんにお願いしてますうちの商品の包装、ぜ〜んぶ可愛いらしいのですが、特にわたくしが好きなのは、ストロベリーロールケーキのデザインなんです。あれは本当に完璧のペキで、美味しそうかつ魅力あるデザインで、これは! とお客様にも手に取っていただける、良いものだなあと常々。確か山路さんでお願いしていると思いますが」
山路社長は前菜をぺろりと食べて、箸を持ったまま手持ち無沙汰にしていたが、はっと顔を上げて隣にいた息子の肩をポンポンと叩いて掴んだ。
「おい、雅也。良かったな、お前のデザインを褒めてくださったぞ」
息子の雅也さんがうんと頷く。
(息子さんには初めて会ったけれど、大人しい人だなあ)
次期社長だというのに。山路社長の豪傑さの遺伝子は微塵も見て取れない。しかも、会ってから一言も喋ってない。なんとも奥手な方だ。
(うちの社長とは大違いだな)
井桁秘書とのやり取りは聞いてて笑えるものがある。いち企業の社長と秘書とは到底思えない、コントみたいなノリ。
だから、楽しい。役員室は今、本当に楽しいのだ。
「あらまあ、雅也さんがデザインしてくださったのですか」
はっと引き戻され、僕は山路親子との会話に参戦。
「もちろん、ストロベリーロールケーキの売れ行きは、うちの主力製品のトップ10に入ってます。パッケージのお陰でもありますね、ね? 会長」
「もちろんそうですわ!!」
にこっと僕が笑うと、雅也さんが首を少しかかげた。隣にいる社長をちらっと見る。
その態度に違和感を持つ。
(なんだろう??)




