EP44
男性は、ほわわわみたいな笑顔を寄越しながら、近づいてきた。ガタイ良すぎでイカつい! そしてさらに距離の詰め方がエグい!
近い近い〜〜
「千堂社長、私は『千堂屋』開発部の、小山田慎と申します。いつもお世話になっております」
「こちらこそいつもお仕事ありがとうございます」
そちら様は、私服のようですが本日は?
と、顔に出ていたのだろうか。
「あっ、今日は私、有給休暇を取っておりまして。妹がいるんですけどね、彼氏ができたっつーんでね。ま、お祝いに全自動掃除機ってのを買ってやろうって」
溺愛兄か。ルンバなんて結婚祝いであげるやつやん。妹に彼氏ができてよっぽど嬉しいんだな。
「それはおめでとうございます。いーなー彼氏」
「社長は? 彼氏いるんっすか?」
「それが今の今まで、できた試しがないんですよ。恋愛の神に見放されてウン十年、縁ってなかなか、落ちてないですね〜」
「は!? そんなまさか!? うちの咲にできて、社長にできないなんてこと、あっちゃならねえ! 私がなんとかしますよっ」
小山田氏、ぐいぐいくるなあ。ぐいぐい系か。見かけ、大工か現場の男っていうかオラオラオラ! って感じだけど、イカつい容姿だし、こんなにもぐいぐい系なのに、会社では洋菓子作ってどう?? うまい?? ってやってるなんてことの不思議。
ふしぎ〜〜
「いえいえ、こればっかりは自力で頑張らないと。これは私に課せられた、恋愛七福神からの試練ですからね」
すると、小山田氏興奮。
「さすが社長だ! 外見は女だけど、中身は真の漢だ。かっこいいっすね!!」
……ん? 男? なんだって?
「そうですか? いやあまあ、そんなこともないですけどもぉ」←男扱いは気になるが褒められているからまんざらでもない




