EP43
佐久間さんがテーブルの上に置いてあったコーヒーを飲む。私も真似してコーヒーを飲む。
うーん。良い香りに癒されるぅ。社長の飲み物と言えばブラックコーヒー。だが、私はまだお子ちゃまの舌なので、コーヒー牛乳でげす。
「まあこれで、売り上げが伸びれば良いですけどね。社長、あんたはとにかく仕事してください。書類溜まってるの見えるよな?」
あごでくいっと社長デスクへと促す。
「りょーかいしましたー」
私は近くに置いてあったカバンを肩にかけると、「ではちょっとその前に、家電量販店に行ってきます」
そう言って踵を返す。
「え? は? ちょっと待て!! Σ(-᷅_-᷄๑) %◆&◎★!!!」
私は怒声を背に、役員室から飛び出した。
*
会社から矢魔田デンキまでは車で20分の距離。
その音響機器のコーナーに、私はいる。
だが普段から音楽とは縁遠い者が、数ある音響機器の中から秀逸品を選び出して、購入なんて芸当できるだろうか、いや出来ない。
(これはもう丸めこまれるのを覚悟の上、店員さんを呼んで、オススメを買うしかない)
と、心を決めたところで、スタッフーと手をあげ……ようとしたら、そこで声を掛けられた。
「あのう、もしかして……?」
店員さん……じゃない。驚いた。普通にお客さんの装いの男性が、「社長!! 社長じゃないですか。こんなところでお会いできるとは」




