EP39
「そういえば私、まずもってこの本社自体、ぜーんぜん知らないわ」
そんなことに気づいたのが、就任1ヶ月が過ぎた頃。
おいおい何やってんのワイ。
社長が本社のトイレの位置もわかってないって、どんだけボンボン社長なのよ! ←役員室の隣のトイレだけは知ってる
「佐久間さん、今日の午後からですけど、ちょおっと探検に行ってきても良いですか?」
すると、佐久間さんがゆるーく口を開く前に、井桁氏がマシンガンのようにトークする。
「は? 探検? どこ行こうとしてます? ははん、さてはこの書類の山を無視するわけですね。これが終わるまで、遊びに行っちゃいけません。わかりましたか? はい、お手」
くっ。そこまで言われると、どこにも行けない!
手をずいっと出してくるので、握りしめていた本社の案内用パンフレットを渡す。
た、探検……。くっ。
パンフを受け取った井桁さん、途端にうへぇって顔をする。
「パンフぬっっるっ」
「豊臣秀吉的人肌に温めておきましたあ♡」
「ったく。パンフなんか握りしめちゃって……遊園地に遊びに来た子どもじゃないんだから」
ふーんだ。良いもんね。パンフはいっくらでもあるんだから。
「じゃ、時間外なら良いんですよね? はーいわかりましたよ、終業してからいっきまーす」
半分ヤケになりつつ、私は山盛りの書類に向かう。
「ぜひそうしてください」
わかりましたよーはーあヤレヤレ ʅ(◞‿◟)ʃ
ハンコ持ってきてーーー!!




