EP33
「こんにちは〜」
松谷町販売店の厨房の中を覗くと、明日の下準備をしている悟さんと目があった。
「悟さん、新人さんの派遣、遅くなりました。すみません」
「おお、ちな……じゃなかった社長! その節はありがとうございました」
手を止めて、タオルで手をふきふき拭きながら、近づいてくる。
店長は商店街の個人店へと納品に行っていて不在らしい。
「あれから調子はどうですか?」
「親父、ずいぶん大人しくなりましたよ。あのあと、オカンにも大目玉食らってましたからね。今度やったら速攻で離婚とか言われて、それがかなり堪えたみたいです」
マジか。母つよ。
「お母さまにお話しされたんですね!?」
悟さんが頭をかきながら、いやあ、俺の口が滑っちまって、へへへと言う。
「あらあ」
そうですか。さぞご立腹でしたよねー。
「もう少ししたら、新人さんいらっしゃるので、よろしくお願いしますね。お二人とも千堂屋の商品が大好きとのことなので、即戦力だと思いますし、ぶっ飛んだとこない人なので今度こそは大丈夫だろうと」
「そうですか、それはありがたいです」
「でもまあ、親子喧嘩はほどほどでお願いします」
「それはもう!!」
「ではまた少ししたら、様子を見に来ますね。あと、これを……」
私は抱えていた荷物を椅子の上に置いた。
悟さんは???という顔をしながら、荷物の中を覗き込んだ。




