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EP28


「それでは松谷町販売店の空いた穴には、パートさんを二人、派遣しますね」

「……派遣しますねって……千夏ちゃん? キミ、まさか……」

店長も悟さんも目が皿のようになっている。

「はい。4月1日付けで『千堂屋』社長に就任しました、千堂千夏と申します。これからもどうぞよろしくお願いしまっす」

大きくお辞儀をし、目一杯の挨拶をして笑った。



「しっかしすげー驚いてましたね、店長と息子。それに、なんだかんだで上手くいきましたね」

車を運転しながら、井桁さんがぽつりと言った。

「うーん。上手くいったってわけでもないけど……結局立花さんを辞めさせた形になっちゃったから」

「社長。あなたはドMですか? あんだけ頭のおかしな女に引っ掻き回された挙句、我が社の売り上げの足を引っ張ってるわけですよ? あの色ボケ店長もろともクビでも良かったのでは?」

「厳しーなー」

あははと私は苦笑い。

「そりゃそーでしょ。社長の腕に我が社の命運がかかってるんです。300人の社員が社長の一挙手一投足に振り回されるんですよ」

「うん。わかってる」

素直に頷いた。シンママの立花さん。娘さんを育てるのに必死なんだろう。自業自得とはいえ、職を失った。

自業自得? ううん、私のせいでもある。

うーん。やっぱクルものがあるなあ。これは罪悪感、か。

「ただね。千夏さんは頑張りましたよ」

そう言って、隣から手が伸びてきて、私の頭を覆った。そのままヨシヨシと撫でる。

「え……?」

ドキッと胸が鳴った。大きな手が、髪をぐちゃぐちゃと掻き乱していく。

えええーわわわーーー。

「えええっと……あ、ありがとうございます」

それに、『社長』ではなく名前呼びだったきがする。ふいにだったので、聞き間違いかもしれないけど。

ぽぽぽと顔が火照ってしまい、困ってしまった。

手でパタパタとあおぐ。

「なんですか? 暑いんですか?」


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― 新着の感想 ―
社員300人! 改めて、すごい会社でした。 立花さん、まさに女狐でしたけど、娘さんは真っ当に育てている感じでしたね。 荒療治でもスカッと、井桁さんもなかなかの役者で♡ 頭ヨシヨシ、ニヤニヤしちゃいます…
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