EP27
「それじゃ、私たちはこれで……」
そろりと帰ろうとすると、そこで悟さんが動いた。
「親父……目、覚めたか?」
「ん? ……ああ。オレ完全に浮かれちまってたんだな。恥ずかしいわ。さっき、この人が立花さんに言ってたこと、オレ自身に跳ね返ってきちまった。奥さん居ながら若い女性にフラフラいっちまって、夫としても父親としても恥ずかしい男だったよな」
「親父、ようやく……わかってくれて良かったよ」
「すまなかったな、悟」
私は悟さんの顔を見て頷いた。悟さんもお礼のつもりなのか、こくんとあごを打つ。
「親父、俺な。休みなく年がら年中、家族のために働いてる親父を尊敬してるんだ。そんな親父のこと助けたいって思って、こうして店を手伝ってる。俺も頑張るから。一緒にこの店、切り盛りしていこうぜ」
「……頼もしいな。ありがとう」
「もうよそ見すんなよ」
「ああ。わかってる」
良かった。なんとか丸く収まったかなあ。
拾った立花さんのエプロンをぎゅと握る。
「このエプロンは、洗濯して立花さんに渡しておきますね」
「?? でも立花さんは……」
店長も悟さんも顔を見合わせている。
「こんなことになってしまったので、ここではもう雇えないとは思いますが、他の店舗で雇って貰えないか聞いてみますよ」
「え!! でもまたそこで問題でも……」
「もちろん釘刺しときます。それと監視もつけときます」
私は笑ってエプロンをカバンにしまった。




