EP17
佐藤さんは30歳の主婦さんだ。
昨日、私、客として買い物したけど覚えてます?
「もにゃもにゃ千夏と言います。よろしくお願いします」←苗字で身バレアウト
「厨房だった? 大変だったでしょ。店長と悟さん、めっ (タメ) ちゃ仲が悪いから」
「昔からですか?」
「ううん、前はそんなこと無かったんだけどね。店長と悟さんってば、パートの立花さ……」
と、そこで口をつぐむ。
厨房から店長が出てきて、私が先ほど生クリームを詰めた商品をパックし、店頭に並べ始めた。
すると佐藤さんも、せかせかとポップを用意し、包装紙などを整理整頓。
(立花さん……??)
立花さんといえば、もう一人のパートさんだ。立花美香。数ヶ月前に入ったばかりのパートさんだ。確かシンママだったはず。
しかし空気!! 二人がめっちゃ喧嘩するもんだから、ピリついてる。緊迫感。お客様が入ってきても、これじゃ入ってくんな邪魔すんな!!! って言われてるような感じで、寄せ付けない雰囲気。いらっしゃいませも小さい小さい。
終わってるな。
(嘘でしょ、これじゃお客さんも逃げてっちゃうよー売り上げもままならないし)
頭を抱えてしまった。
*
本社には寄らずに家に帰る。もちろん会社は有給使って休んでいるからね。松谷町販売店であったことを会長である母に話してみる。
「ねえママ。どうしたら良いと思う?」
「千夏、ママのことは会長とお呼びなさい」
おおう。愛憎韓国ドラマの見過ぎやんけーー。
「家なんだからママで良いでしょ」
「それにしても……どうしてそんなに仲が悪いのかしら……」
母がうーんと呟く。私はコーヒーを飲みながら、母に訊く。
「心当たりない?」
「ないわ」
「そっかー」
「……でもね、千夏」
「?」
「松谷店さん、確か女性のパートさんがお二人いらっしゃるわね」