EP138
「これが現実です。広報にはかなりの投資をしましたが、結果これ。新商品も出すには出すんですが、なかなかヒット商品が生まれない。このままでは、昨今の物価高、そして人件費高騰の波にのまれ、倒産の危機に陥ってしまいます」
副社長が、だーーっと喋りまくり、そして専務にバトンタッチ。
「そうなんです。なので、良いアドバイスをいただけたらと思い、こうして参上した次第でございます。同業者で右肩上がりでいらっしゃる『千堂屋』さんの経営のノウハウを勉強させていただきたいんです!」
私は、うーんと唸ってしまう。私たちがアドバイスできる立場にないことは、重々承知しているからで。
「せっかくのお申し出ではございますが、これまでの『千堂屋』は、私の父、先代が汗水流して存続させてくれたもので、それを私が潰すわけにはいかないとの思いひとつで、今までなんとかやってきました」
私は頭を下げた。
「私も必死です。他の方への差し出がましいアドバイスなんてありません。ただただ必死にやる、それ以外はありませんから」
「しゃ、社長……」
「申し訳ございません。このお話はなかったことにしてください」
二人はがっくりと項垂れ、そしてショボンとなってしまった。おじさんのショボンはあまり可愛くないが、胸は痛む。
「ただ……」




