EP134
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月曜日。会社に行ったら、どえらいことになっていた。
「社長が秘書の家に泊まったってことじゃありませ〜ん♪」
佐久間さん、うざいですよ。これからもそのスタンスでいきます?
「どういうことですか?」
私は慌てて説明を求める。
「大手の洋菓子メーカー『フジツヤ』が、うちに投資したいと言ってきているんですよ」
「投資? では、乗っ取り……っと言い方。吸収合併……ってことですか?」
「どっちの言葉もどっこいどっこいですが!最終的にはそうなる予感でーす。でもまあ、うちは株式上場してませんからね。その点無理矢理ってのはないから、そこは安心かな〜」
「向こうはお互い協力関係をというていで、提案してきています。確かに、協力できるとすれば、うちは販路の拡大できますし、向こうはうちのバズリ商品を併用で販売できるし、お互い美味しいところはあります」
井桁さんが、真面目な顔で説明してくれる。
「逆にデメリットもあるってことですね」
「はい。もちろん。うちの業績が悪くなったら、そのまま本当に吸収されてしまうこともあり得ます」
だよね。
それは、『千堂屋』の名前を失うこと。
私は頭を抱えてしまった。
「とりあえず、向こうの副社長との会合を提案されています。社長、どうされます?」
「わかりました。話だけでも聞いてみましょう。会長、副社長にも同席をお願いしたいです」
「あれ? いげちゃんは?」
私は、井桁さんを見ると、「もちろんです」と力強く答えた。
「まだまだ新米のぺーぺー社長です。お二人とも、会長と私を助けてください」
そう言って、頭を下げた。




