EP131
ぴくりとも動かない。
「千夏、寝てるよな?」
はああと大きなため息をつくと、仕方なく俺は社長の横で目を瞑った。
*
朝、目が覚めると、そこには秘書の寝顔。
(なんと国宝級のイケメンがここに……)
だが、なぜそんなシチュエーションに?
いや、覚えてる。
全てを。
ここは井桁さんの自宅。
チューもしたし、自分からここにホイホイ着いてきた。
身体は動かさず、視線だけで部屋をぐるり探索。キョロキョロしてからまた、井桁殿の寝顔を見つめてみる。
(はあ〜寝顔もイケメンってどんだけイケメンが過ぎるのよ)
「好きだ」とお互い確認した。
(両想いやって〜〜ん!!)
布団の中で悶える。くーーー井桁さんを起こさないようにと、足を小さくバタバタ。
すると。
「何やってんだ?」の、眠そうな声。井桁氏渾身の甘さと色気をまとわせたお声に、私はガバッと飛び起き、「おおおおはようございますううう」と挙動不審に叫ぶ。
洋服は昨日のまま。ちゃんと着ているところを見ると、ハメは外してない。
けれど歯も磨いてないし、顔も洗ってない。もちろん、お風呂も入ってない。
あらゆる自分が臭い、気がする。
「すみません、私、あれからすぐ寝ちゃったわけですね。ベッドも占領しちゃって、なんちゅう厚かましい女! すみませんでした」




