EP127
「え? どうしてここに……あーーーわかってしまいました。佐久間さんですね?」
「あ、や、いや、その……はい」
俺は、社長の陰にヤツが隠れているのではないかと、ちらちらと辺りを見渡す。
「どうしたんですか? 後ろがなにか?」
「あいつ……神林は?」
「えっ」
社長が俺が陣取っていたテーブルの向かいに座る。店員に声を掛けて、生中を注文。
「はいはい。なるほどです。悟さんとのデートだと思ったわけですね」
「違う!! いや……そうです」
ここは素直にならねえと。
「佐久間さんにしてやられましたね。私も、このお店に行くように指示を貰ったんです」
「え?」
「井桁さん、今日って、立花さんとデートなんですよね?」
「へ? 誰それ?」
俺は豆鉄砲を食らったハトみたいな顔をしていただろう。理解不能なことを、社長が言い出している。
「それも嘘ですか。佐久間さん、あいつぅ〜〜やりやがったなあ!!」
社長は楽しそうに、店員が運んできた生中を、ごっごっごっと勢いよく飲んだ。
「立花さんは、松谷町販売店を辞めたシングルマザーですよ」
「えっ! はっ! あの女狐かっっ……でもそれがなんで俺とデートだなんて……ってかあれ以来全然会ってねえし!」
ここら辺でようやく佐久間っちの計略に気づき始めた。




