EP115
「ちょっとあんた。秘書だか何だか知らないけど、それは言い過ぎじゃないですか?」
「神林さん、良いんですよ〜井桁さんは、ちょっと毒舌なところがあって。でも、少しずつ慣れてきたところなんですよ」
「…………」
珍しく、井桁さんが反論しない。どこか具合でも悪いのだろうか。
「それじゃあ、俺はこれで。報告は以上です」
悟さんは、井桁さんを睨みつけながら立ち上がり、引いた椅子を元に戻した。
「また何か気になることがあったら教えてください」
「承知しました。失礼します」
さあ、これからどういう手を打つべきか、難しい局面に出会ってしまった。
「井桁さんはどう思います?」
「なかなか筋の通ったイケメンだ」
「いや違ーう。牧野さんと鮫島課長のことですよ。どうしましょうかね」
「神林悟が入って雰囲気も変わるかもしれません。少し様子を見ますか」
「そうですね。会長と副社長にも良い案がないか聞いてみますよ」
「……わりました」
いつもメモをしている手帳をパタンと閉じて、井桁さんは一つため息をついた。
「井桁さん、どうしたんですか? 元気がありませんね」
「そんなことは……」
「もしかして、私が毒舌とか言っちゃったからですか? すみません、変なフォローになっちゃいました」
「あれ、フォローだったんですか? 俺はてっきり、悪口かと思いましたよ」




