EP114
「どうしました?」
「何か告げ口するようで、嫌なんですけど……」
あれ? 今までのは何だった? 報告と告げ口の境は限りなくグレー( ´∀`)
「鮫島課長も、よくミスをするんですよ。段取りも悪いし、やる気がないっていうか。覇気がないっていうか。ふにゃふにゃしてるんですよねー。説教以外は」
「もしかしてそれって、説教が好きってことですか?」
「生き生きしてます」
近年稀に見る説教魔。
うわあ、これは前途多難だあ。
こちらが何を言っても、相手の性格はなかなか変えられない。やはり、お互い譲歩するしか方法は無いのだけれど。
「分りました。その件は少しお時間くださいね。とりあえず悟さ、神林さんは人事部の居心地って、どうですか?」
「全然いいですよ。何か本社ってだけで、才能溢れるすごい人がたくさん働いていて、バイトしかしてない俺が正社員なんか、できっかなーって構えてましたけど、営業部に行っても総務部に行っても、みんな親切丁寧だし、『千堂屋』って、シゴデキの良い人が多いなって言う印象です」
私はその言葉を聞いて、少しほっとした。
「秘書の井桁さんや、副社長の佐久間さんから、父が人材育成に重きを置いていたと聞いています。それが実っているのかもしれませんね。私も、頑張らなくちゃ!」
そう言って、両手で力こぶを作ると、隣から「社長、そのポーズやめて下さい」と井桁氏の冷静沈着な声。
「ははは、ちょっと子どもっぽかったですかね」
「えーー全然ですよ!! めっちゃ可愛かったと思いますよーー俺は、ね」と、悟氏。
これには照れてしまった。
「うわ恥ずかしすみません変なことやっちゃって」
早口で謝ったら、「社長、謝る必要なんてないです。が、社長たるもの、社員との信頼関係が大切なのに、その社員に可愛いーー♡なんて言われるのは、社長失格じゃないですか?」




