EP110
就任当初から、そんな目で見たことは一度も無かった。けれど、たびたびのモヤり嫉妬のせいで、自分の気持ちが混乱していたから。
「佐久間っちはさ、社長のことどう思う?」
問い掛けた。けれど、佐久間っちはなんだかしたり顔で、俺に言った。
「僕はねえ、あんな若さでいきなり社長になってさ、それでもまあ健気に頑張ってるっていうか、自分がやるべきことをちゃんと分かってるって、凄いと思うんだよ」
佐久間っちは、ハイボールを舐めてから、皿の上からポテトを1本引き抜いて、頬張った。居酒屋『ビーバー』(カワウソ寄り)にて。
「まあ、的確な指示してる、いげちゃんのおかげでもあるんだけどねえ」
「俺は、その……俺も社長はよくやってると思う。けどよ、仕事の話だとしても他のヤツと喋ってる姿見ると、なんかこう……ムカついてくるっていうか、胸の辺りがモヤモヤするっていうか」
「いげちゃん、それはさ。社長を抱きしめてみればわかるよ」←犯人
「な!! は?? どういうことだよ、なんでそんなことしなきゃならねえんだ?」
「うんそうだね。抱きしめてみて、キスできるかなぁって考えてみてよ。で、イケると思ったなら勝ち。で、イケないと思ったら、負けってとこかなぁ」
「……一体何の話をしてるんだ?」




