EP107
そんなこんなで、悟さんは敵情視察へと潜り込んだ。まるでスパイ映画……と思っているのは当然私だけ。
「まったく今度は何をやらかすのだと思ったら。私になーーーんの相談もなく」
「井桁さん、すみません。今回は独断と偏見で決めさせていただきました。一定期間、これで様子を見てみます。そんなこんなで悟さんとは、来週面談を予定しています」
「場所はどこですか!?」
「え……面談室ですが……??」
「○日ですね。承知しました。面談室を押さえておきます」
「お願いします」
「私も参加します」
「え〜〜♪」
井桁さんは眉をひそめ、「そんなチイカワ風に言ってもダメです。私も同席しますから、ぜっ てえ、抜けがけすんじゃねえ」
「……りよ、了解です ( ̄^ ̄)ゞ」
*
抜けがけ。それはスリル。
神林悟と井桁鼎は、とお〜っても仲が悪い。
それは以前、松谷町販売店へと、カップル潜入捜査で出会ってからは、なにかとライバル心むき出しなのだ。
「社長に交際を申し込む時点で、ヤツは進むべき道ってのを履き違えているな」
井桁っ! なんだとこらあっ!! もういっぺん言ってみろおぉぉ!!
と、私はアゴを猪木にして言う。(心の中で)
「だいたい、このカワウソのどこが……いやまあモノホンのカワウソはめっちゃ可愛いんだが……ん゛ん゛ん゛……それになんで社長のこと、名前呼びなんだよっ。いち社員、しかも入社したてのヒヨッコの分際で、千夏さんだと!? いい加減にしろよ、ごるあぁぁぁあ!!」←迫力負け
はあ?? 自分だって『千夏』とかって呼び捨てにしとるやないかい!! 何言っとんじゃあ、こらあぁぁぁ!!(と、心の中で囁く)




