EP102
「外部って言っても身内ではありますけどね。適任がいるんですよー」
「もしかして……あの人ですかあ?」
「佐久間さん、わかっちゃいました?」
「かな〜?? って思って」
「あらあ、千夏ちゃんに佐久間さん、一体誰のことを言っているの?」
ママが目を細めながら聞いてくる。
「この件は、人事部の他の社員さんともコンタクトを取りながら、進めたいと思います」
私は、カバンを肩にかけると、「ちょっと出かけてきまーす」と社用車の鍵を取った。
「あ、こら!! 俺も一緒に行くからな!! ちょっと待ってろ、この書類だけファイリング……」
そう言っている隙に、私は役員室を出た。
また、怒られるだろうが、仕方がない。今回は、井桁さんが一緒だと、話が進まないかもしれないから。
私は駐車場へと歩き、社用車に乗って運転を始めた。
*
「え? は? 俺が? ですか?」
まあ寝耳に水とはこのことだろうと思う。
『千堂屋』松谷販売店
店長の息子、神林悟22歳さん。
今はアルバイトで、ここ松谷販売店に属していて、父親である店長、神林吾郎40歳さんを手伝っている。
「はい。悟さんにはぜひ本社の人事部にお越しいただきたく」
「え? 俺? なんで?」
「異動ってことになりますが、悟さんはアルバイト社員さんですので、断っていただいても良いのですが……できたら……本社へお越しいただけないかなと。もちろん正社員としてなんですけど」




