EP100
「おい。あんた。うちの社長のツラ構えを、よーーく見るんだな」
井桁さんが抑えた声で、ドスを効かせる。
牧野さんが、その脅しに身体をびくっとさせながら、私の方を見てくれた。
ありがとう、井桁さん。
「牧野さん、私はこの後、人事部の皆さんに1人ずつお話を聞こうと思っています。そして、もちろん鮫島課長にもです。そこから総合的に判断して、問題を解決したいと思っています」
デスクの上のライトをオフにする。
「本音を知りたいんです。社員の皆さんが、気持ちよく、仕事のできる環境にするために。だから牧野さんが望むなら、異動もやぶさかではないと考えます。けれど、牧野さんが今まで通り人事部で仕事をしたいと思っているなら、そこをなんとかしなければなりません」
私は笑って、「まずは牧野さんの本音を聞かせてください」
牧野さんは、目を伏せて俯いた。
そして、訥々と話し出す。
「……鮫島課長の態度がちょっと酷いんです。少しミスしただけで、すぐ揚げ足取ってくるし、立たされたまま長い時間、説教してくるし。この前なんて、せっかく私が企画立案した新人研修を、よく見もせずに一言でボツって言われて。それで、カッとなって……」
「ブラックと」
「はい。でもブラックは言い過ぎました。鮫島課長の件以外で、ブラックだと思うことはないのに、腹いせにそんなことを……これ誹謗中傷になるんですかね。私、減給……ってかクビですかね」




