9話 キル
陽動
何かに釘付けにさせている相手を騙すマジックがある
事務所 午後20:02
タリック「それで…男はその廃墟でメガネを見つけたんだ」
ゴクリ…
ダンが唾を飲み込む
カレン「それで…?」
タリック「そのメガネはよーく見ると…昔亡くなった友人の物なんだ…」
レオ「まさか…友人が…」
タリック「そう!そのまさか…」
タリックが少し大きな声で言う
レオ「なんだよ…」
タリック「実は…そのメガネを模して作ったものがある…」
タリックはゆっくりとテーブルに置く
ダン「おぉ…なんか憑いてないよな…?」
タリック「これはレプリカ…だけど…よーくここ見て…」
ダン「お…おぉ…なんか血が…」
カチッ…
電気が消える
ダン「なっ!おい!真っ暗だ!お前ら!」
カレン「何よこれ」
レオ「…」
カチッ
そうして電気がつくと
ばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!
ダン「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
タリックがゾンビのマスクをつけて驚かす
ダン「や!なんだぁ!お前!」
タリック「メガネの主だぁぁぁぁ!」
ダン「やっぱり憑いてたぁ!」
パシン!
カレンがはたく
タリック「いてっ…」
カレン「…」
そして無言でマスクを取り上げ
ダン「お…タリック…」
タリック「ちょ…なんだよカレン…」
カレン「馬鹿馬鹿しいの!私もう寝るわ…」
レオ「おいおい…せっかくのお泊り会だろ?」
タリック「そうそう…あ…一緒に寝る?」
カレン「死んでも嫌!」
カレンは寝室のドアに手をかけ
バタン!
思いっきり閉める
タリック「…」
啞然とする三人
タリック「あー…よし…10ドル賭けてポーカーする?」
レオ
&「嫌だ」
ダン
{~Magician~}
"Magilist"~人の“認知”を操る者。
翌日
コラソンハウス 午前7:32
コラソン「おい…待ってくれよ…」
クリスティン「嫌!」
屋敷の廊下を足早く歩くクリスティン…
それと追いかけていくコラソン
コラソン「あれは誤解なんだ…あれは…浮気じゃない…」
クリスティン「何よ…!使用人の部屋なんて前まで行ってなかったじゃない…!」
コラソン「それは…」
クリスティン「それに!あなた下着だったのよ!?もう少しまともな言い訳が欲しかったわね!」
ナタリー「あ…あの…」
ナタリー…
使用人が話し辛い風に話しかけてくる
クリスティン「っ…なによ…あなた…」
クリスティンが詰め寄る
クリスティン「あなたね…本当に許さないわよ…私の夫を…」
ナタリー「違うんです…」
クリスティン「うるさい!使用人の部屋は三階!とっとと戻りなさい!」
ナタリー「う…はい…」
ナタリーは慌てて行く
コラソン「おい!ナタリー!」
クリスティン「ふん!」
クリスティンは自身の部屋に入りバタンとドアを閉める…
コラソン「…」
事務所 午前9:12
カレン「ん…」
カレンはゆっくりと目を開けると
タリック「やぁ…」
カレン「ん…うん…って!何で隣にいるのよ!」
カレンは慌ててベットの端に行く
タリック「え?いや…昨日のこと覚えてないの?」
カレン「ええっ?」
タリック「君が部屋に怒って入ってから…俺が追いかけて…」
カレン「え!えぇ!?」
タリック「ってのは噓…目覚めに隣にいたらどんな反応するのかなって」
カレン「っ!最低よ!最っ低!」
タリック「ま…まぁ…待って…ほら…朝食にマフィン…」
一方
ダン「あいつどうなったかな…」
レオ「さあ…」
ドコン!ゴカン!
レオ「保冷剤と包帯…」
ダン「何言ってるんだ…きっと固定具はいるぞ」
レオ「針もな…」
ガチャン!
ドアから慌てて出てくる
タリック「ごめんって!冗談!!」
カレン「マフィンで釣れるほど馬鹿じゃないの!!!!!」
タリック「っ!」
タリック…万事休すか…!
プルルルル…!
みんなの手が止まり電話に視線が行く
レオ「助け舟だな…」
カチャリと電話を取る
レオ「もしもし…こちらタリック事務所」
タリック「ね…カレン…俺が必要な人が出たし…とりあえず…その椅子降ろして…」
カレン「…ふんっ…」
カレンは椅子を置くと鼻を鳴らして事務所のソファに座る
ダン「おっかねえ…」
レオ「殺人?ええ…了解…すぐ向かいます」
レオが電話を置くとジャケットを手に取り
タリック「お…もう行く?」
レオ「あぁ…行こう」
ダン「タクシーは俺が呼んだぞ」
タリック「気が利くねっ」
カレン「ほら…」
タリックの肩にわざとらしくぶつかり事務所から出ていくカレン
タリック「…うーん…彼女は本当に読めない」
ダン「そうか?俺は読めるぞ?怒ってる…」
タリック「…そうだね」
コラソンハウス 午前11:12
警察バン「こちらです」
ガチャリ
タリックはドアを開けてもらい
タリック「…これは…」
コラソン「う…うぅ…何でナタリーが…」
カレン「うわ…酷い…」
ダン「首を切られてるな…」
警察バン「どうやら彼女は午前10時ごろにベットの下に遺体が隠されていたのを発見されたそうです」
タリック「発見したのは誰?」
警察バン「彼…コラソンさんです」
タリック「そっか…えっと…コラソンさん…」
コラソン「はい…」
タリック「この人と親しかったの?でも…この人は指輪をつけてないけど…あなたはつけてますね?」
コラソン「ええ…俺は…彼女…ナタリーに色々尽くしてもらってて…それで…」
タリック「話相手だった?」
コラソン「はい…それに…この前なんて…俺のズボンの穴をふさいでくれたり…」
タリック「そっか…奥さんは?」
コラソン「…一階のリビングに…」
タリック「了解…カレン…ダン…レオ…行こう…」
レオ「あぁ…」
4人で廊下に出るとタリックは先頭を歩き話す
タリック「あの部屋の窓が異様に綺麗だった…もしかしたら清掃業者が何か見てるかも…」
カレン「ええ…確かに…他の部屋よりも綺麗だった」
ダン「…しかし…情報は限られているな…」
タリック「そうでもない…」
ダン「え?」
タリック「とにかく…コラソンさんが落ち着くまで奥さんに話を聞こう…」
カレン「もう一回見に行くの?」
タリック「そりゃ…一回では無理だったからね…コラソンさんがああなってる中物色できないよ」
レオ「それもそうだな…」
そうして四人リビングを見に行くと
タリック「どうも…こんにちは…」
クリスティン「…?あなたたち誰よ」
タリック「タリックです…探偵…奥さん…名前は?」
クリスティン「…クリスティン…」
タリック「クリスティン…クリスティンさん…妙に落ち着いてますね」
クリスティン「ええ…だって旦那の浮気相手が亡くなったんだもの…」
カレン「浮気?」
タリック「浮気ね…どうしてわかったんです?」
クリスティン「彼…あの使用人の部屋から下着姿で出てきたのよ?」
タリック「そうか…」
レオ「…ずっとここに?」
クリスティン「ええ…警察にも言ったのだけれど…ここにいたわ…ずっとね」
タリック「ふむ…クリスティンさん…携帯あります?」
クリスティン「なんでかしら?」
タリック「何かわかったら電話してほしくて…」
クリスティン「そう…悪いけどないのよ」
タリック「そうですか…なら結構です…失礼」
タリックは足早にリビングを出ていく
カレン「ちょっと…」
カレンとレオとダンは追いかける
タリック「…階段見て…」
カレン「あ…」
ナタリーの遺体が運ばれている
タリック「悲しい顔をしてるように見えた…もう抵抗できずに殺されたような」
レオ「それからわかることは?」
タリック「これまでに散々見てきた感想は…抵抗できずに殺された事件は大体…」
ダン「暗闇で殺されていた…」
タリック「そう…」
タリックは階段を上がっていき
タリック「まだこの部屋になにかあるはずだ…」
遺体のあった部屋のドアを開ける
タリックは入るとすぐに見渡して物色していく
タリック「花瓶…白い花…水が綺麗だからかえたて」
カレン「にしても大きい窓ね…」
レオ「あぁ…」
タリックが見上げて言う
タリック「そのためか…電気がついてない…午前中は外の光を頼りにしてたみたい」
ダン「そうだな…で…何か分かったか?」
タリック「少なくとも…被害者が叫び声を出す前に殺したやり方は分かったかもしれない…」
カレン「じゃ…次はどこに行くの?」
タリック「コラソンさんに話を聞かないと」
カレン「ええ…でも平気かしら」
タリック「俺たちが捕まえなければ迷宮入りだからね…泣き寝入りなんてさせたくない」
レオ「それもそうだな」
マジシャン
~マジリスト~
警察署 午後13:02
警察バン「では…お気を付けて…」
コラソン「はい…どうも…」
タリック「すみません…コラソンさん…お疲れだと思いますが…」
コラソン「待ってくれ…探偵さん?その…警察に全て話したし…もう…クタクタで…」
タリック「警察が聞いてないようなことを俺はヒントにして捕まえる…だから…少しだけ時間をください…きっと犯人を捕まえます…力になりたい…悔しい思いなんてさせたくないので…」
コラソン「…分かりました」
遠目から見てるカレン達
カレン「上手くいったみたい」
レオ「しかし…何を聞くつもりなんだか…」
ダン「さあ…花瓶の花についてとかじゃないか?」
事務所 午後13:34
タリック「まず…花瓶の花について聞きたいんですが…」
コラソン「花瓶…あ…ええ…覚えています…なんせ見覚えのないものだった…」
タリック「なるほど…」
コラソン「何か事件に関係が?」
タリック「犯人の何か…陽動のようなものかもしれない」
コラソン「陽動…?」
タリック「それと…窓清掃業者について…」
コラソン「窓清掃業者?」
タリック「……なんでもありません…それより…コラソンさん…ナタリーさんとの話を聞かせてもらえませんか?」
コラソン「はい…これは…昨日の事でした」
~回想~
コラソン「っ…しまった…ズボンが…」
俺は洗濯を干していたナタリーの近くでズボンの穴に気づいたんです
ナタリー「あ…コラソンさん…それ…」
コラソン「あぁ…最悪だ…妻に昔貰ったズボンだったから…」
ナタリー「…奥様との思い出ですか?」
コラソン「あぁ…まぁ…昔のものだし仕方がないか…飾るとかにしてくか…気に入ってたぶん残念だが…」
ナタリー「あ…あの…よろしければ私が直しましょうか?」
コラソン「え?でも…ナタリー…それは仕事には…」
ナタリー「私…お世話になってますし…これくらいのことはしたいんです…」
コラソン「そ…そうか…なら…」
ナタリー「それに私…お裁縫が趣味でしたし…さ…私の部屋に道具があるので…」
そう言って俺はナタリーと部屋に行った…
部屋につくとズボンを脱いだ…ナタリーは二年の仲でズボンを脱いだくらいだと驚かなかったし…なにせ張り切ってて…
ナタリー「えへっ…思い出の品…任せてください!」
なんて言ってた
俺は代わりのズボンを忘れてたので下着のままで部屋を出たらクリスティンに見られた
~回想終わり~
タリック「じゃあ…浮気はしてなかったと…」
コラソン「勿論ですよ!少し強気でも…俺は…クリスティンを愛してた…ただ…ナタリーにぶつけてた言葉は許せない…」
タリック「そうですね…さて…話をありがとうございました」
コラソン「はい…その…必ず捕まえてください…」
タリック「ええ…もちろんです…」
ガチャリ…コラソンが帰っていく
ガチャリ…またドアの開く音…
今度は隣の部屋で聞いていたカレン達が出てくる
カレン「話を聞いてた限り…」
ダン「犯人はクリスティンの可能性が高いな」
タリック「あぁ…だけど…彼女にはアリバイがある…おそらく…誰かを雇ったんだ…財力もあるしね」
レオ「殺し屋か…それも腕がいい…」
タリック「ふむ…次は窓清掃業者の所に行こうかな…きっと家の場所から察するにカールの窓清掃業者だ」
レオ「だな…行こう」
午後15:23 カールウィンドウクリーニング
従業員 ハリサ「あーその家か…確かに清掃したよ」
タリック「良かった…大きい家だけど…清掃は君一人?」
ハリサ「そうそう…なんせ一部屋だけでいいって言われてさ」
タリック「一部屋…もしかしてそれ三階の?」
ハリサ「そうそう!三階だった!それで…俺がロープでつらさがって準備してたら…」
カレン「もしかして何か見たの?」
ハリサ「うん…なんか…白黒の若い娘に金髪の女性が話してて…花を渡してたかな…」
レオ「花?」
ハリサ「ああ…なんか白い花」
ダン「あの部屋の花か…」
タリック「どんな表情だった?」
ハリサ「どっちも凄い笑顔…なんか白黒の服のいかにも使用人って方は特に嬉しそうに花を受け取ってたかな…」
タリック「…そっか…その後は?」
ハリサ「うーん…もう窓掃除の為に泡をぶっかけたから中見えてないな…でも…掃除後は部屋に誰も見えなかった」
タリック「そっか…でも十分だよ…」
タリックは胸の名札を見て
タリック「ハリサ…ありがとう…俺達はこれで…」
ハリサ「あぁ!なんか映画みたいな経験で楽しかったよ!」
タリック「ははっ…それは良かった」
そうして建物から出る
カレン「何…訳が分からないわ…時間的に花を渡したのは喧嘩の後よね?彼女が笑顔を向けるなんて」
タリック「それがナタリーの気を引いたんだ…」
カレン「え?」
レオ「やはり…犯人はクリスティンか?」
タリック「彼女は指示役…クリスティンを問い詰めよう」
マジシャン
~マジリスト~
コラソンハウス 午後16:34
クリスティン「何よ…また呼び出すなんて…こっちは新しい使用人を探してたのだけれど」
タリック「それはすみません…所で…ナタリーの部屋に窓清掃業者を呼びましたね?」
クリスティン「私?知らないわ」
クリスティンはよそを見る
タリック「きっと電話の記録は残ってますよ」
クリスティン「そう…そうよ…私よ」
タリック「なぜ隠したかはひとまずおいて…」
タリックは部屋の電話の子機を触り
クリスティン「ちょっと!」
レオ「落ち着いてください」
レオがいさめる
タリック「おかしいですね…これに履歴はない…では…あなたの携帯から?しかしおかしい…あなたは携帯がないとおっしゃってましたね?」
クリスティン「…な…なくしたのよ」
タリック「あー確かに…あり得る…さて…これは知ってますか?ナタリーは浮気相手でも何でもなかった」
クリスティン「…そんなの戯言…」
タリック「これを見てください…」
ズボンを見せる
タリック「ナタリーはあなたが昔旦那さんにプレゼントしたズボンを修復してくれてたんです…そうして…ナタリーの部屋から下着姿の旦那さんが出てきた…」
クリスティン「そんなの…」
タリック「きっとナタリーの部屋に裁縫道具がまだ置いたままです…証拠になる…」
クリスティン「ナタリーは…コラソンの為に?」
タリック「それと…あなたの旦那への思いの為に…」
クリスティン「…じゃ…わたし…」
クリスティンは息が荒くなる
タリック「あなたのトリックはこうだ…」
タリックは説明する
タリック「あなたは殺し屋に依頼し窓の清掃業者を頼んだ…殺し屋は事前にナタリーがいないうちにベットの下に隠した…あなたは次に今朝のことのお詫びのように花を渡しに行った…」
クリスティン「は…その…」
タリック「ナタリーは心から喜んでました…きっとあなたとの仲直りが嬉しかった…けど…あなたにとっては陽動でしかなかった…彼女が花に夢中になる…そしたら窓の清掃業者に気付かない…電気をつけることも…ない…それと窓清掃業者はあなたの優しさの目撃者になる…」
カレン「…」
カレン…レオ…ダン…は無言で聞き続ける
タリック「するとあなたが出た後…窓清掃業者は泡を出し窓は光を遮る…ナタリーが視界を奪われてる中…殺し屋は身につけた暗視ゴーグルか何かで忍び寄り…ナタリーを殺し…ベットの下にナタリーの遺体と隠れる…」
クリスティン「私…私…」
タリック「彼女は抵抗できなかった…死ぬ直前まであなたの花を見ながらあなたの善意を信じてた」
ドアが開く
ダン「ん…?っ…タリック…」
タリック「?…」
コラソン「クリスティン…本当なのか…」
クリスティン「私…は…」
タリック「クリスティン…今…自白したら…少しでも軽くなるはずだ…」
コラソン「そんな…こいつは」
カレン「コラソン…ダメよ…あなたは正しいけれど…きっと責めても何もないわ」
コラソン「…っ」
クリスティン「私が言った…殺し屋を雇ったわ…」
タリック「どうも…バン…入って」
警察バン「はい…クリスティンさん…あなたを逮捕します」
クリスティン「ええ…コラソン…」
コラソン「やめてくれ…」
クリスティン「ごめんなさい…」
クリスティンはバンに連れていかれる
タリック「コラソンさん…俺達はこれで…」
コラソン「はい…ありがとうございました…」
タリック「あぁ…行こう…」
カレン「ええ…」
数日後
墓場を訪れるカレン
カレン「タリック…」
タリック「ん?」
カレン「ん?じゃないわよ…こんなところにいたのね…」
タリック「あぁ…」
カレン「そのお花…ナタリーの?」
タリック「まぁね…俺も関わった人間としてさ…」
カレン「そう…そのもう一本のは?」
タリック「何でも…」
タリックは空を見上げて目をつぶる…アンへのメッセージカードが添えられた花を握りしめて…
続く