8話 トラップ
トラップ…
マジックでも相手が罠にかかるまで待つことがマジックの成功のカギとなる?
事務所 午前4:32
あははははははは!
脳内で…夢なのか、現実なのか分からない
タリック「っ…!」
飛び起きるその瞬間まで確かに聞こえていた笑い声…
胸の奥をかきむしるような笑い声…
タリックは時計を見る…
タリック「いやな時間…」
そう呟きつつスーツを着る
いつもはワードローブのアンとの写真を見て始まる朝も…
タリックは目を背けていた
数分後
スーツを着て椅子に腰をかけているタリック…
考えがまとまらない…自分は今も探偵を続けるべきなのか…
また誰かを捕まえたら誰かの大事な人が死ぬかもしれない
タリック「…何を考えている…あいつは特殊…それに…」
「あなたが立ち止まったら、誰があの人たちを暴いてくれるの?」
カレンのこの言葉…
タリック「ふぅ」
タリックは深く呼吸し立ち上がる…
タリック「立ち止まるな…」
向かった先はワードローブ…タリックはアンとの写真を…わざと倒していた写真を戻し指で埃を払う
そうしてタリックはいつも通りコーヒーを淹れにいく
{~Magician~}
"Magilist"~人の“認知”を操る者。
数時間後 事務所 午前10:48
事務所のドアを開けて誰かが入る
レオ「おはよう…」
タリック「お、おはよう!今日も元気に行こう!」
レオ「お…おう…」
カレン「おはよ…」
タリック「お…やあカレン」
カレン「はぁ…」
レオ「タリック…無理に明るく振舞おうとしてないか?」
タリック「ふぅ…そうじゃない…ただ…元気でいるべきなんだ」
カレン「ま…そのほうがいいんじゃないかしら…」
レオ「カレン…」
カレン「私達には分からないわよ…」
レオ「…そうだな…」
プルルルル…
レオ「お…」
レオが電話を取る
レオ「タリック事務所…はい…殺人?連続?」
タリック「ふむ…リラックスしないと」
カレン「はいはい…事件でね」
レオ「よし…早速行こう」
タリック「うん…ダンは?」
レオ「いつか来るだろ…」
レオが事務所のドアに近付くと
ガチャリ
ダン「おはよーう!今日も一日元気にイチ!ニ!イチ!ニ!」
ダンがふざけたメガネをかけながら陽気に踊り入ってくる
レオ「何してんだ?」
ダン「いち…にい…いち…え?」
ダンはタリックの様子を見る
タリック「はは…」
ダン「あーえと…事件?」
レオ「ああ…まさに出るところだった」
カレン「あんたって本当に空気に読まれない男ね」
ダン「あ…はは…」
タリック「さ…行こう」
タリックは微笑みながら出ていく
グローリー病院 午前11:28
タリック「病院での殺人か…うーん」
レオ「それだけじゃない…連続だ…他の病院でもあったし…全部毒殺だ…」
カレン「最近毒殺ばっかりね」
ダン「それほど入手しやすくなったんだな…」
タリック「怖いもんだね」
警察バン「あ…タリックさん…」
タリック「やぁ…バン…元気?」
警察バン「ええ…まぁ…でもあんな事が…」
タリック「あぁ…市長は残念だった…」
警察バン「ええ…」
タリック「でも被害者をこれ以上増やさないために俺らはいる…だろ?」
警察バン「その通りですね!」
タリック「で…現場は?」
警察バン「ええ…被害者の死亡推定時刻は8時56分…名前はカルロス…遺体は既に回収され…まあ…確認したら毒殺と…」
タリック「毒は身体のどこから?」
警察バン「肺ですね…吸ったようです」
タリック「病室はもう安全だよね?」
警察バン「ええ…ただ…妙なのはここからで…病室に入ったのはお見舞いする方々で最後で…」
タリック「そっか…疑ってないってことは…」
警察バン「はい…お見舞いの方々が帰ったのは機能です…つまり…」
タリック「死亡推定時刻と離れすぎてる…ね…」
警察バン「はい…」
タリック「ちょっと病室見ようかな…現場の…」
警察バン「僕はここで待っときますね」
タリック「分かった…レオ!カレン!ダン!」
レオ「おう…」
病室を開けると…
タリック「窓開いてる…」
レオ「あぁ…発見者は直感的に毒と分かったらしい」
カレン「そもそも…依頼者は誰?」
レオ「館長だ…」
ダン「ま…自分の病院で殺人なんて嫌だろうしな」
タリック「その通りだね…お…ん?」
タリックが姿勢を低くしベッドの下を覗く
タリック「なんか…反射してる…」
タリックは手を伸ばして取ると
タリック「何だろ…」
銀色のプラスチックの何か
カレン「破けてるわね…」
タリック「ほんとだね…んー」
タリックは凝視する
タリック「ふーん…で…他に何かあるかな…」
レオ「ここにお見舞いのバスケットがある…クッキーかな」
タリック「あぁ…お見舞いの人で最後だったと」
ダン「看護師も入ってないのか?」
タリック「おそらくね…にしても日当たりがいい部屋だね」
レオ「あぁ…俺も入院するならここがいい」
カレン「そうね…ここは…」
タリック「午前中は日当たりがいい…か…ふむ…」
カレン「何か分かった?」
タリック「まだ…かもね…ちょっと話を聞きたいな」
ダン「そうしよう…」
病室を出る…
タリック「うーん」
タリックが病室前辺りを見回すと…
店員「はいどうぞー」
子供「わーい!お父さん喜ぶかな…」
お母さん「きっと喜ぶわ…」
風船販売…
タリック「ふむ…小さい頃好きだったなぁ」
タリックは風船を売ってる店員に近づき
タリック「どうも…」
店員「あぁ!どうも!お見舞いですか?」
タリック「そうなんだ…カルロスって名前の人のね」
店員「カルロス?」
店員が病室を見る
タリック「君も知り合い?」
店員「いえいえ…俺はただ風船販売してる身なので…」
タリック「そっか…風船販売の…調子はどう?」
店員「どうでしょう…でも…何だかこの仕事だけが俺に笑顔を向けてくれる気がして…」
タリック「そっか…じゃ…一つ買いたいな…」
タリックは笑顔を向け
タリック「はい…」
2ドル渡し
店員「あ…どうも…ありがとうございます!」
タリックは風船を受け取りながら
タリック「そういえば…一つ…カルロスの病室近くで何か不審な人見てない?」
店員「うーん…でも風船買っていって持って入ったのは見ました」
タリック「そっか…ありがとう…君…名前はなんて名前?」
マーティン「マーティン」
タリック「そっか…俺はタリック…よろしく…」
マーティン「はい!」
タリック「あ…何か分かったら教えて?」
マーティン「はい…!」
タリックは風船を持ちながらレオ達の元へ戻って
レオ「なんで風船買ったんだよ」
タリック「鏡代わり?」
タリックが風船をダンに向けて
ダン「うお…反射した俺は凄くチビ!」
タリック「はは…あ…そうだ…次に行きたいところが…」
カレン「何?どこ?」
タリック「彼のお見舞いに来た人たちの所…クッキーのバスケットにダンスクラブって書いてあったし…大学名も書いてた…」
レオ「なら…行こうか」
タリック「うん…所でダン…ダンスって言うと…」
ダン「今朝のことは忘れろ…」
マジシャン
~マジリスト~
ラングイッジ大学 13:08
ボトム「ワーン、ツ…ワーン、ツ…」
ダンスクラブはリズムに乗りキレキレのダンスを踊っていた…
タリック「いいねー…」
レオ「楽しそうだ…これが本当のダンスか」
レオはダンを見てクスリと笑い
ダン「うるせえな…」
カレン「タリック…」
タリック「うん」
タリックは頷き、ダンス練習している彼らに近づき
タリック「みんな…ちょっといいかな…」
踊っていた彼らの視線はタリックに移る
ボトム「ストップ…えっと…どうされました?」
タリック「ここにいるみんな…カルロスは知ってるかな?」
セリーヌ「カルロス?どうかしたんですか?」
タリック「彼が今日の午前…何者かに殺された」
セリーヌ「!?カルロスが!?そんな…でも…」
ボトム「セリーヌ…」
タリック「君…彼にクッキー焼いて持って行った?…」
セリーヌ「はい…」
タリック「そっか…じゃあ…」
セリーヌ「はい…カルロスは彼氏でした…」
タリック「…残念だ…その…他にカルロスのお見舞いに来た人たちは全員集まって」
そうしてそのままカルロスのお見舞いに行った人たちが集まる
カレン「多いわね」
レオ「それくらい人望があったんだろ」
タリック「この感じを見るに…君たちにおいてカルロスは凄くいい人たちだったんだね?」
ボトム「はい…彼リーダーで…みんなに分け隔てなく接してくれて…」
マリア「本当にいい人だった…」
キャルロット「ええ…本当に…」
セリーヌ「う…ううっ」
~回想~
セリーヌ「ねえ…やめてよ」
「いやだね!お前みたいなえらい子ちゃんのせいでこっちは生きにくいんだよ!」
いじめは水をかけられたり…ロッカーがぐちゃぐちゃにされたり
???「お前ら!」
「やば…カルロスだ!」
セリーヌ「あ…」
カルロスが滅茶苦茶にされたロッカーを見て直してくれてる…
セリーヌ「大丈夫ですからっ…」
カルロス「良いんだ…あ…君ダンスクラブの…気付かなかった…私服そんな感じなんだ?」
セリーヌ「あ…えと…変ですかね…」
カルロス「い…いや…素敵だ…綺麗…」
セリーヌ「…ありがとうございます」
セリーヌは照れながらも嬉しそうに笑い
カルロス「にしてもダンスクラブ仲間だとすると余計許せないな…」
セリーヌ「え…」
カルロス「俺は人の幸せを奪う奴らは許せないんだ…」
セリーヌ「…かっこいいですね…」
カルロス「え?」
セリーヌ「あ…!い…いえ!それでは…!」
セリーヌはそそくさと行ってしまう
それから徐々に…
~回想終わり~
セリーヌは泣きながら声が出なかった
ボトム「セリーヌ…大丈夫だからね…私たちがいる…」
セリーヌにみんなが寄り添う
タリック「…」
カレン「どうするのかしら…」
ダン「ありゃ…多分…」
タリック「さて…情報は集まった…そろそろ行こうかな…」
カレン「え…もう?」
ボトム「もう行かれるんですか?もう何も?」
タリック「ええ…ご協力ありがとう…」
タリックはそう言い出ていく
カレン「何考えてるのかしら…」
レオ「とにかく…あいつに従って見よう…」
レオ達も軽くみんなに会釈しタリックについていく
…
外を歩きながら
カレン「ねえ…あれで本当に十分だった?」
タリック「ああ…間違いなく彼女彼らはやってない」
レオ「何故言い切れる?」
タリック「本当の思いやりだからさ…」
ダン「なるほどな…」
タリックは立ち止まり振り返り
タリック「…ねえみんな…ちょっと事務所で一人になりたくて…いいかな」
レオ「ああ…構わない…な?」
カレン「えぇ…また明日会いましょう」
タリック「ありがとう…また」
タリックは三人と別れ事務所にタクシーで戻っていく…
事務所 午後15:32
ガチャリとドアを開け真っ先にソファに座り込む
疲れが急に襲ってくる
タリック「…」
しかしじっとしてると…
自分のせいで
タリック「っ…ふぅ…」
タリックは深呼吸し心を落ち着かせる…
タリック「…」
タリックはそうやって落ち着かせていると気付いたら眠りに入っていた…
ピピピピ!ピピピピ!
アラームが鳴る…
午前10:12
タリック「…」
久々の長い睡眠だった…
かなり長い…その時…
プルルルル…
タリック「?」
タリックは電話を取る
タリック「もしもし?」
ボトム「タリックさんで合ってる!?大変なの!」
大学 ラングイッジ ダンスクラブ 午前11:12
タリックはタクシーを降りると駆け足で向かう
ダンスクラブに入ると
セリーヌ「うう…う…」
セリーヌがが泣いてみんなは寄り添っていた
タリック「どうしたんだい?」
ボトム「さっき知らない人が来て…カルロスが死んだのはセリーヌのせいって…殺したのは実質君だって…」
タリック「誰か分かる?」
ボトム「えっと…どこかで…えーっと」
ボトムが思い出そうとしていると
マリア「あの人!病院でセリーヌにお見舞いに渡してあげてって風船をくれた…」
キャルロット「あと…これで終わりにして俺の勝ちだみたいなことも…」
タリック「遅かったか…っ…セリーヌ…心配しないで…君のせいなんかじゃない…それじゃあ…」
タリックは急いでタクシーを捕まえ病院に向かう
午前12:24 グローリー病院
タリックは急いで病院内を探す
タリック「いない…」
ということはやはり…
タリックは屋上に急いで上がる
ガチャリ!
すると
タリック「マーティン!」
マーティンが飛び降りようとしている
タリック「君の考えを当てよう!君は病院にいつもお見舞いがくるカルロスに嫌悪感を抱いていた!だからあるトリックを使ったんだろ」
マーティン「っ…ふん…」
タリック「それは…風船にヘリウムと…毒のガスを一緒に入れた…そして…お見舞いに来たセリーヌにタダで渡してカルロスの病室に置かせた…そしてカルロスの部屋、午前中は日が差しすぎるくらい明るい…まるで…風船のひとつやふたつ、熱で割れてもおかしくない…そうしてガスが出てカルロスは死んだ…君は彼に勝ちたくて彼の恋人に殺させたようにし…君はいま死んで勝ち逃げしようとしてる…だけど…君は俺に負けた」
マーティン「負けただと?」
タリック「君は視線を隠せなかった…俺がカルロスについて聞いた時君は病室を見た…彼の病室を…その時点で君は…負けたんだ…」
タリックはゆっくりという
タリック「気持ちはわかる…君はずっと見ていたんだ…
セリーヌが笑いかけるのも、カルロスがみんなに囲まれているのも…
誰も君を見てくれない世界で、たった一人だけ、カルロスだけが光ってた…」
マーティン「……違う!違う!俺だって……!」
マーティンは泣きそうになるが何かが弾ける
マーティン「いや…ふ…ふはは…違う…殺したのは彼女…」
タリック「君だ…彼女…セリーヌはカルロスを愛してた…心の奥底で君も分かっているだろ…これは勝ててない…でもそうは思いやすい…だから思い込んでる…」
マーティン「だったら俺の勝ちでいいだろ?」
タリックはゆっくり近づいて言う
タリック「マーティン…死すらも勝ちにできるなんて思ってるなら…それは夢物語だ」
タリックはマーティンを押す
マーティン「おわっ!?」
マーティンは落ちていく…が…
バフン!と跳ねる
タリック「時間稼ぎ出来た俺の勝ちだね」
館長 ユーリー「まったくもう…変な要望すること…」
タリック「ふふん…」
屋上から手を振るタリック
マーティン「くそ…!くそくそ!」
警察バン「さて…逮捕する…」
ラングイッジ大学 午後13:32
タリック「やあ…」
タリックはセリーヌに後ろから声をかける
セリーヌ「あ…タリックさん…」
タリック「大事な人を失うって…はっきり実感がわきにくい…」
セリーヌ「はい…まだ明日…彼が笑顔で来てくれるかもって…」
セリーヌは涙を流しながら続ける
セリーヌ「風船渡した時も…彼笑って喜んでくれて…」
タリック「…最後に笑顔を見れたんだね」
セリーヌ「…はい…」
タリック「少し君を元気にしたいから言うと…俺は人の幸せを奪うやつを許さない…だから捕まえるためにこれからも戦う…」
セリーヌ「…」
セリーヌは少し驚きながらも思い出す
「俺は人の幸せを奪う奴らは許せないんだ…」カルロスの言葉…
セリーヌは自然と涙が出る
きっと彼は天国でも誰かを助けてる…そんな気もした
タリック「それじゃ…俺行くけど…絶対に…ナイフも…縄も手に持っちゃだめだからね…その…まあ…さようなら」
セリーヌ「変な人…」
セリーヌはクスリと笑い去っていくタリックの背中を見る
事務所 午後14:21
タリックは事件…彼女の顔…全てを思い出しながらも帰る…
きっとあの時の自分と同じ気持ちだったろうと…
タリック「はぁ…ふぅ」
ガチャリとドアを開けると
パァン!パァン!
クラッカーが鳴る
タリック「な…なんだ?」
レオ「俺達は置いて逮捕に貢献したんだろ?」
ダン「ま…そんな感じで…祝ってやるぜ!タリック!」
カレン「ほら…急ぎなさいよ…ぼーっとしてないで」
彼らは勿論違う理由だったが…それでもタリックの嬉しさに違いはなかった…
その時…ダンが元気に言う
ダン「よっしゃ!特別に!ダンスみたいか!?」
タリック「いいかな」
カレン「いいわ」
レオ「いい…」
三人の声が重なった
続く