7話 信用なら
信用…マジックもカウンセリングもまずは信用し信用させるもの
必要不可欠なのだ
事務所11:43
タリック「今日はやけに暇だね」
レオ「依頼もまったく…こない…困ったな…」
ダン「なぁ…俺帰って良いか?」
レオ「お…シャロットに会いたいか?」
ダン「そりゃそうだろう?最近めっきりだ…」
カレン「あと30分は待ちましょ?前なんて帰ってすぐ呼ばれて嫌だったのよ…」
レオ「最悪のパターンだな」
コンコン…
事務所のドアがノックされる
タリック「あれ…珍しいパターン…」
タリックはドアに歩いていき開ける
ガチャ…
ダンビー市長「よお…タリック…」
タリック「ダンビー?どうしたんだ?」
ダンビー市長「少し話がある」
タリック「話?」
ダンビー市長「最近娘と仲良くやってるみたいだな」
タリック「あ~ええ…実は…カウンセリングの先生として…なんせ娘さん…誘拐から塞ぎ混んでるでしょう?」
ダンビー市長「まぁな…前まではかなり遊びに出ていた…」
タリック「最近は…良くなって来たかな…」
ダンビー市長「ああ…まぁ…それなりに…所で…一つ依頼がある」
タリック「依頼?」
ダンビー市長「私の屋敷でどうやら私を暗殺しようとしている者がいると…」
タリック「それは誰から?」
ダンビー市長「ガードだ…最近周辺に消音装備の付いたピストルが見つかったらしい…一発撃たれていたとも…」
タリック「失敗か…運がいい」
ダンビー市長「ふん…普段ならその減らず口を怒鳴っていたが…今はそれどころじゃないな」
タリック「その通り…さて…案内よろしく…カレン…ダン…レオも」
レオ「お…おう!」
カレン「…」
ダン「すごいことになってきたな」
{~Magician~}
"Magilist"~人の“認知”を操る者。
ダンビー市長家 午後13:02
タリック「相変わらず…広い家…」
ダンビー市長「だが皮肉なことに…暗殺者はどこから来るかわかりにくい」
タリック「そうだね…」
レオ「…どこ見ても動物の皮が転がってる…」
ダン「熊のやつ本物かな…」
カレン「馬鹿ね…暗殺者がいるかもしれないのに吞気に話してないでよ」
レオ「ま…確かに俺たちも標的になりうるしな」
アンナ「タリック!」
カレン達は目を向ける
アンナ「会いたかった…」
何とアンナはタリックに抱き着いていた
タリック「あぁ…どうも…この感じだと回復してきてるみたいだね…」
アンナ「そうなの!なんか平気になってきて…ふふ…」
ダンビーが咳払いをする
ダンビー市長「アンナ…」
アンナ「あ…ごめんなさい…私ったら…えっと…部屋に戻るね…」
ダンビー市長「あぁ…そうしろ…今は危険だからな」
アンナ「はーい!じゃ…タリック…また後でね!」
アンナは嬉しそうに部屋に戻って行く
カレン「ふん…何よあれ」
レオ「お嬢様って感じだな」
ダン「ま…救ってるし無理はない…」
タリック「所で…ダンビー…料理の毒とかは…」
ダンビー市長「一応してる…が…私はそこまで望んでない…なんせ」
タリック「料理人は昔ながらの人?」
ダンビー市長「その通り…ただガードは進んで毒見をしたがる…この前なんてアンナが温めたホットミルクだって毒見し始めた…」
タリック「それは凄い徹底ぶり…ふむ…とりあえず料理人に会わせてくれない?」
ダンビー市長「あぁ…いいが…詰め寄るなよ?」
タリック「勿論」
タリックはダンビーに案内され休憩部屋に行く
ダンビー市長「おい…メリッサ…グランドを呼んでくれ」
ダンビーはメイド【メリッサ】に指示をする
メリッサ「分かりました…多分彼の部屋なので少々お待ちください」
ダンビー市長「あぁ」
メリッサが休憩室を出て呼びに行く
タリック「ふーん…全員泊まり込みなんだ?」
ダンビー市長「ほとんどが家が遠い…仕方ないことだ…」
タリック「遠い?」
ダンビー市長「私は市長として…人間として他で受け入れられなかった他国からの人材の本当の能力を採用したい…彼らの故郷は国境を跨ぐ…」
タリック「いい考えだ…」
ダンビー市長「そうだろうとも…」
メリッサ「ダンビー様…グランドが来ました」
ダンビー市長「あぁ…ありがとう…」
グランド「ダンビー…どうした?そちらは?」
タリック「探偵のタリック…この家で暗殺を企てる人物がいるとのことで」
グランド「なるほど…」
タリック「ま勿論…第一印象…あなたは怪しくないですよ…長い付き合いの本当の友情なら殺害なんて考えもしませんしね」
グランド「じゃあ…誰の可能性が?」
タリック「それなんですけど…今のところなにも…しかし…ピストルが落ちてるのは確かに警戒すべきですね…」
ダンビー市長「しかし…指紋もついていない…手袋をつけてたとなると本当に計画的だ…けしからん…」
タリック「例えばの話…本当に狙われてるのはダンビーかな」
ダンビー市長「なんだと?」
タリック「アンナは一回誘拐で捕まってる…あの時捕まえたのが全員だと限らないとすると…顔を見たことのあるアンナは暗殺対象になり得る…」
ダンビー市長「…じゃあ…」
タリック「娘は危ない可能性がある…」
グランド「そうか…しかし…ここで雇われてる連中全員いいやつだ…そんな事をするかどうか…」
タリック「となれば…内戦を起こさせ本当は外部の者の暗殺計画の可能性もある…」
ダンビー市長「俺を狙う連中…」
一方
ダン「はぁ…ったく…あいつ何を話し込んでるんだか…」
レオ「まぁ…市長が狙われてる事件だ…相当大事だしな」
カレン「とはいえ暇ね…」
ダン「俺達は近くのカフェで楽しむか…」
レオ「それがいい…」
カレン「ちょ…本気?大事件なんでしょ?」
ダン「調べた所美味しいマフィンもあるらしい」
カレン「あいつなら大丈夫かしらね」
レオ「そうこなくっちゃ」
午後14:03 ダンビー市長の家
タリック「所で…その見つけた銃って実際に見れるかな」
ダンビー市長「あぁ…いいだろう…金庫室だ」
タリック「かなり厳重だね…」
ダンビー市長「当然だ」
タリックはダンビーに案内され金庫室につく
ダンビー市長「確か…この箱に…ほら…これだ…」
タリックは銃を見る
通常のピストル…
タリック「っ…」
違う…よーく見る
ガスマスクのマーク
タリック「ガス…ガストンギャングの物だ…なら…ミアも絡んできてる!」
ダンビー市長「ギャング?」
タリック「あぁ!この屋敷に犯人なんていない!」
マジシャン
~マジリスト~
一方同時刻 午後14:03
カフェ ライトニー
カレン「ん…確かにここのマフィン美味しい…」
ダン「あぁ…コーヒーも悪くねぇ」
レオ「あぁ…こう…コーヒーって感じの味だな…」
ダン「ん…ふぅ…ん?」
ダンがふとした瞬間カフェの窓の外を見る…すると…
ダン「おい…ガスギャングじゃないか?あれ」
レオ「ん?」
レオも同じ方向を見る
レオ「間違いないな…様子を見に行こう」
ダン「あぁ」
レオとダンは席を立ちすぐに行ってしまう
カレン「え…ちょ…もう…」
カレンもマフィンを咥えながらついていく
レオ「ようお前ら…簡単にほっつき歩いてどうした?」
ギャング1 パルメラ「あぁ?なんだぁ?」
ギャング2 ウェルズ「おい…タリック事務所のやつらだ」
パルメラ「っ…こいつらが言われてた…そうか…」
???「相変わらず元気だなぁ?」
レオとダンはその聞き覚えのある声に振り返る
ガス「よう」
レオ「ご本人の登場かよ…」
ダン「ここで会うとはな」
ガス「こちらの美人さんは?」
カレン「カレンよ…」
ガス「ははっ…あいつに美人の新米かよ…まあいい…お前ら…面貸せよ」
14:27 ダンビー市長の家
キャーーーーー!!!!!
タリック「っ!」
ダンビー市長「なんだ!」
アンナの声!
急いで走って行く
バタン!
勢い良くアンナの部屋に入ると
アンナ「離して!嫌っ!」
タリック「っ…ガスギャング…」
ギャング3 ジャック「っ…ばれたか…」
ダンビー市長「おい!グランド!しっかりしろ!」
タリック「っ!」
ダンビー市長「死んでいる…」
タリックは考えに考える…
戦えない…そもそもどうやって入った?
どうやって…
タリック「…グランド…利用されたか…」
タリックは瞬時にグランドの遺体を観察する…
後ろから撃たれている…となるとタイミング悪く銃を向けられた
アンナの部屋に入れているのもグランドに声出させた!
タリック「っ…君…君…落ち着いて…ガスからの指示?いい?これ以上殺したら…ただじゃ済まない…」
ジャック「どうせそうなのさ…俺は仕事を遂行しないと殺された…だったらこいつも!」
アンナに銃を向ける
タリック「よせ!後悔するぞ…俺達は死んでもいい身だ…けどその娘はダメ…わかるね?つまり…逃げながらギリギリでその娘を渡してくれたら逃げられる…きっとガスも認めるぞ…」
ジャック「上手くいくはずがない…」
タリック「出来る…きっと…ゆっくり…ほら…扉の方に…」
アンナ「う…うう…」
ジャック「っ…俺は…」
ダンビー市長「っ…く…く…タリック」
ジャックはゆっくり扉の方に…向かいながら
タリック「分かってる…な…おい…その娘を…」
ジャック「あ…あぁ…」
ジャックがアンナを押して引き渡す
アンナ「きゃっ…!」
タリックはアンナをバシリと抱きしめ
ジャックは逃げて行く
タリック「ふぅ…」
タリックは安堵のため息をつく
ダンビー市長「アンナ…あぁ…良かった…」
タリック「一旦…安全を…従業員全員の…」
ダンビー市長「あ…あぁ…そうだな…」
タリックとダンビーはアンナを守りつつ屋敷の従業員を集める
一方
レオ「こんなお洒落なお店に連れて何を話したい?」
ガス「まぁ落ち着けよ…ここのステーキはうまいぞ」
ダン「俺欲しい」
ガス「ふん…素直でいいじゃねえか」
その時…カレンは急に電話を耳に当て
カレン「タリック?どうしたの?侵入?カウンセリング?え…そうなの?分かった…後でね?はい…」
ガス「この女は礼儀がなってねえな」
カレン「うるさいわね…」
レオ「何の電話だ?」
一方 ダンビー市長家
アンナ「パパ…」
ダンビーの部屋に入るアンナ
ダンビー市長「あぁ…アンナ」
アンナ「大丈夫?」
ダンビー市長「お前こそ…平気か?まったく…立て続けに…お前は強い娘だ…」
アンナ「ありがと…その…パパ…またホットミルク作ったよ…」
ダンビー市長「あぁ…ありがとな」
ガード「ふむ…市長…念のため」
ダンビー市長「見ればわかるだろう!」
ガード「飲むまでが仕事で…」
ダンビー市長「娘が私に作ったホットミルクだぞ!」
ガード「そういう意味では…」
アンナはそんなやり取りを見てクスリと笑い
アンナ「タリックの所行ってくるね?」
ダンビー市長「あ…おい…またっ…ったく…」
アンナはそそくさと行ってしまう
ダンビー市長「仕方ないやつだ…」
ガード「市長…毒見」
ダンビー市長「やかましいわ!」
タリックのいる部屋
アンナ「タリック…」
ガチャリとドアを開ける
タリック「あぁ…カウンセリング…始める?」
アンナ「うん!」
一方…
カレン「で侵入したギャングがアンナを人質とってーとか…カウンセリングしてあげるだとか」
ダン「それを電話で伝えるなんてあいつらしいな」
ガス「まだまだ生意気らしいな…所で…侵入したやつ…ジャックって名前だったはずだ」
カレン「え?そうなの?」
レオ「侵入させたのはやっぱりあんたか…」
ガス「それより…もっと大ニュースがある…」
ダン「大ニュース?」
ガス「最近ミアも動いてきていてな…生意気にも…あいつはお前らにこう言えって言ってきやがった…」
レオ「なんて?」
ガス「私の本名は…アンナ・ダンビーよ…ってな…」
カレン「…え?」
…
バタン!
ガード「市長!市長!…っ!無線応答せよ!市長が血を吐いて机に倒れた!」
タリックとアンナ部屋
アンナ「ねえ…タリック」
タリック「ん?」
ミア「アンが死んだ時…どう思った?」
タリック「え?」
数十分後
ダンビー市長の家に駆け込むカレン達
カレン「パトカー…」
レオ「絶対に何かが!」
バタン!
中に入っていく
ダン「っ…どうなってる…」
ガード「っ…探偵集団…おい…よく聞け…」
レオ「なんだ!」
ガード「ダンビー市長が死んだ…」
レオ「っ!」
ダン「どういう事だ!」
ガード「牛乳に毒を入れられてた…が…膜で分からなかった…」
カレン「タリックは!?」
ガード「タリック…?っ!上の階だ!階段すぐの部屋!」
カレン「っ急ぐわよ!」
トットッ!
階段を駆け上がって行く
バタン!
ドアを思いっきり開ける…
カレン「タリック!」
そこには呆然としていたタリックが座っていた…
レオ「タリック!平気か!」
タリック「…」
ダン「おい!タリック…!」
~数十分前~
タリック「どういう事だ?」
ミア「なんか…フェアじゃないのよねー私はあなたを詳しく知ってる…あなたは私の存在しか知らない…フェアじゃないのよ…だからわざわざ正体を明かしてあげようと思って…」
タリック「ガスの妹じゃ…?」
ミア「偽名よ~?そんなの…でも…なんでか教えてあげる…あなた…メラリッヒを覚えてるかしら…」
タリック「大統領3回暗殺の?」
ミア「ええ…ラウリー…パルパ…クーリン…三人共完璧な護衛がついてた…でも…遺体も見つからない行方不明…私はもう大ファンになってた…でも…メラリッヒは…あなたが捕まえた…あなたは自供させて…遺体も見つけられた…私がその…存在の名前を知れたのもニュースで死刑が決定されたと発表された時…辛かったわ…ふふ…」
タリック「…」
ミア「前の事件…私誘拐されたふりをしたの…そしたら案の定手際よく捕まえたわね…?私は市長の娘で…しかも誘拐された身だもの…怪しまれない…カウンセリングお願いするふりして…あなたの観察もしてた…あはは…」
タリック「父親を殺したのか…」
ミア「ええ…だって…私を悪にさせてくれるガスも見つかったもん…それにギャング…大きくなってたの…私がパパを騙してお金をもらって渡してたのよ」
タリック「…これは…」
ミア「復讐よ…?小さい乙女の夢を殺したの…それに値するでしょ?タリック…あ…あと…アンの事だけど…」
タリック「やめろ…」
ミア「指示したの…わ・た・し…」
タリック「…」
タリックは何も言えなかった…ただ涙しか出ない…
違う…違うはずなのに出てくる思考は…
”俺がメラリッヒを捕まえたせいで…”
だった
タリック「…」
ミア「あははははははは…!でもまだ楽しみましょう?あなたを殺すのはつまんない…じゃあね…探偵さん…」
タリックは言葉が出なかった…ただ…アンが死んでいる情景がリピートされるばかり…
それだけじゃない
視界がぐにゃぐにゃ歪んで見える…
アンの声だけが何度もリフレインする…
呼吸すらできないような苦しみ…
数時間後 事務所
ニュース
本日…ユイオス町の市長…ダンビー市長が…
カレンも…レオも…ダンも…言葉が出なかった…ただニュースを見て…でもタリックを気にして…それだけだった…
タリック「…」
続く