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徒然詩篇1~恋慕編~

「菫色の気持ち」


皆のためのバラードじゃ 全然泣けやしないけど

自分で考えたウタじゃ どうにも甘すぎるの

雨が降り始めた夜に 膨れあがる孤独と衝動

二枚重ねの我慢じゃ もう耐え切れないのよ


アナタと一緒にやってきたスミレも寂しがってる


どうして何も言わずに何処かへ行ってしまうの

傷つけないようにって考えてるなら 間違ってるわ

尾を引く未練がどうしても断ち切れない

電話は鳴らず 今日も朝になる


そこらの安いお酒じゃ 全然酔えやしないけど

マスターが作ったマティーニじゃ どうにも飛びすぎる

低いジャズが流れる夜に 散りゆく定めの契り

写真の中の虚像じゃ もう満足できないわ


アナタが私にくれたリングはいつもケースの中


どうしてそこまで優しいのに連絡はよこさないの

その時まではって思ってるなら 誤解してるわ

いつもいつでも繋がっていたいのに

部屋は朧気 今日も私は独り


鉢植えに一輪健気に咲くスミレを見ているとふと思うんだけど

まるで今の私 淡くも重い気持ちを象徴しているようじゃない


アナタの横顔は目を閉じればいつでもふと蘇る

どうして何も言わずに何処かへ行ってしまうの

傷つけないようにって考えてるなら 間違ってるわ

それでもどこか後悔しきれない私がいる

嗚呼 どうして何も教えないで突然帰ってくるの

驚かそうって思ってるなら ええ思惑通りよ

心の準備なんて出来てないから

涙がポロリ 空には虹の朝が来る



「ふいに消えたVestige」


人いきれで揺らぐ雑踏に消えて行く小さな背中を

ボクは黙って見送ることしか出来なかった――


キミのためにさらった人形は今も僕の隣で眠ってる

ビーズの瞳に映るのはかくも悲しきヒトリ部屋

未練がましい名残が部屋中をこれでもかと満たして

ブラインドの隙間から差し込む光がその跡を照らした


枕元に漂う面影にすがり今日も眠りにつくのに

ボクはキミの笑顔を思い出せないでいた――


キミといる毎日が記念日だって歯が浮くような

甘い台詞ボクには言えるはずも無いけれど

キミがいるならどんな祝日だっていらない

あったらあったで共に過ごしたいなんて考えちゃうんだ


軽はずみな気持ちは屋根まで飛んで壊れて消えた

ボクはシャボン玉をただ眺めていた――


いつのまにか気付かぬうちに取りこぼしてた……


一度は届いたはずなのに今ではもう無理な相談

ボクは言葉に出来ず通行止めの標識眺めていた

人いきれで揺らぐ雑踏に消えて行く小さな背中を

ボクは黙って見送ることしか出来なかった


キミのためにさらった人形は今も僕の心で眠ってる

ビーズの瞳に映るのはかくも悲しき雨模様


あとに残るVestige いずれ消え行くVestige

ふいに消えるVestige もう戻らない――



「とある紫のキセキ」


いつの間にかの自然消滅と銘打つのが妥当な心もとない関係

何も告げることなくプッツリ 突然音信不通になったキミ

街角のカフェテラスで見つけるなんて今更でしょう 


子供がもう一度読んでよとせがむ絵本を描いてやるんだ

と笑っていたキミの手に納まっていたのは

ボクがあの時あげた紫のペンシルでした


夢を描く自信が無いボクの 空白のデッサンをよそに

キミのキャンバスには とりどりの色が溢れてたね


共に一歩踏み出すごとに距離は刻々遠く遠く


あれだけ「センス無いね」と呆れてたくせにホント嬉しそうにしてた

少し時を経たそいつは 良かった ちゃんと短くなってる

キミの手でボクの想いは微かに息づいていた なんで気付いたんだろ


誰もが泣いて笑って温かくなるほどの絵本を描いてやるんだ

と拳を流れ星に掲げていたキミの瞳は

ボクといた頃と少しも変わっちゃいなかった


人波に飲み込まれ続けよれよれの僕をよそに

キミは草原に一つだけ咲く花のように輝いてたよ


共に一歩踏み出しても踏み出す方向同じにあらず


時が流れ流されて――


書店で見かけた絵本 微笑みながら手に取った

脳裏に浮かぶキミの顔 ふと顔上げるとキミの顔


「やっと会えた」ってキミ どうして今更なんて言える

紫のペンシルをまた一本あげないといけないみたい

今度の休日にでも二人で買いに行こうか






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