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ReCall  作者: をわり
4/5

Aito//: 生々しい記憶達

ソフィーさんが見せたいものがあると手招きする。

そうやって見せられたのは、机上で無造作に広げられた数多くのメモ帳達だった。

「…これは、、」

「さぁ。でも私が読める文字ではないの。ならば記者の貴方ならば分かるかもしれない、と。」

「記者イコール情報屋では無いのですが、、、」

…でも、確かにこの字はとても見覚えがある。

懐かしい母国の、日の本の文字だ。



【 ×月×日

もう私に残された選択肢は逃げるのみ。こんなことなら海外に渡らず国に残れば良かった。】


【×月◯日

命からがらシェルターに入れてもらった。この国の人達も、本当は良い方々なのかもしれない。】


【△月×日

どうやら母国では、私は死んだことになっているらしい。それではもう、戻ってくるなと言っているようではないか。海外に行けと言ったのは御国なのに。】


【△月△日

国は水爆を落とされ壊滅状態のようだ。

もう母国に愛想を尽かした私には、何の関係も無い事であるが。】



日記のようだった。

最後の頁は、ページが破れるほどの、憎しみの込められた強い筆圧で書かれていた。

【もう国など要らない】

と。


「…どうです?何が描いてあるのですか?」

「他愛も無い、楽しそうな日々を綴っただけの日記のようです。少なくとも、私のものでは無いですね。」

否、私のものであろう。

先の戦争に、国が敗れたことを、私の言葉で、私の気持ちを最大限に出して、私なりに書いたのだ。

…しかしこれは、他人においそれと見せる物では無かろう。プライベートだ。

「そうだったのですね。やけに筆圧が強いな、と思ったのは気のせいですかね」

「いいや、やはりこの手記の持ち主もストレスを抱えていたのでしょう。誰しもがなり得る心境でしょう?」

「ええ、そう言われると、そうね。」

「…そうだ、これらの手記は私が預からせてください。何か、まだ重要なことが書かれていそうなので…」

「わかったわ。私はまた別のものを探しておきますね」

ソフィーはそう言うと、部屋をするりと出て行った。


「ああ、どうしてまたこんな。」


思い出したくないであろう記憶であった。

私は、この手記に、これらの記憶を刻んで忘れてしまったのだろう。

見てもピンと来ないのだ。私は日の本の、どこにいたのだろう。この手記達を見ればわかるだろうか。

忘れてしまったからには、きっと思い出さなくてはならないのだ。


ふと、1番ボロボロになった皮の表紙の手帳が目に入る。光沢こそ失われて、なんの輝きも感じないが、なぜか、惹かれるのだ。(ただの気のせいかもしれないが)



…これは、見てはいけない。



「持っているためだけ」の、手記だ。

そう言う気がする。なぜかはわからないが。

いや、記憶を思い出したいならそれこそ見ろ、と言う話だが。



とりあえず、他の手記も見てみることにするか。

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