表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/77

6 最終対決へ⑤

 室内に戻ったマドカへ、キョウコさんが声をかけてくる。


「九条君、スイが目を覚まして、君に……」


 途中で言葉を止め、彼女はわずかに口角を上げた。


「……顔が変わったな、君。凛々しい顔になった。心が決まったようだな」


 そう言われると少々照れくさいが、マドカは意識して目に力を入れる。


「はい。頑張っても五分五分の闘いへ、俺を参加させて下さい」


「では、あの気難しくて頑固で、情緒不安定な兄さんを説得しろ。彼は元々、自分ひとりでアチラへ赴き、ひとりで死にたがっているんだ、一応は隠しているがな。相棒バディが見つかるまで待てと止めていたのは私だ」


 意外なことを聞き、マドカは驚いた。

 ふと彼女は、人間くさい困ったような表情をした。


「お前の気持ちとしては今すぐアチラへ行きたいだろうが、単身で勝てる可能性は1割以下。むざむざ死ぬのは許さない、お前は角野英一であると同時に【eraser】・スイ。お前個人の気持ちはともかく、『世界』は【eraser】・スイが必要だからこそ生み出した筈だから、『世界』の必要に応えてやれ。【dark】との闘いは、なにもエチサと一騎打ちだけでない……、そう言い聞かせて止めてきた。しかし自身の寿命が見えてきた上、相棒バディが見つかった今、止める材料はもうない。あいつは九条君に、君が【eraser】であることはどうしようもないが、わざわざ【Darkness】の許へ行く必要はない、と、言い聞かせるつもりなのだろう……あれでも一応、隠しているがな」


 自分のトラウマを、吐こうが泣こうがあそこまで念入りに話したのも、まあ単純に聞いてほしかったのもあるだろうが、君を呆れさせる目的もあったろうよ、どこまで計算していたのかはさすがにわからんが。


 半ば独り言のように、ぶつぶつそう言う彼女の顔を見ているうち、マドカには思いついたことがある。


「キョウコさん」


 もの問いたげに眉を上げる彼女へ、マドカは訊いてみた。


「キョウコさんは俺を、九条君、って呼びますよね? でもあの人のことはスイって呼んでます。そこには何か……【管理者】として法則とか約束事とか、あるんですか?」


「そんなものはない」


 彼女は即答した。


「彼には『角野英一』以外の、自身で立つためのペルソナが必要だった。私が彼を『スイ』と呼ぶことで、【eraser】・スイとしての人格を強化してきたのだ。最善の策ではないが、次善の策ではあったと今でも思っている」


「……そう、ですか」


 ぼんやりした予想が当たり、マドカは心が陰った。

 が。


(ならば。説得できる、かもしれない)


 それに、同情でも流されてでもなく、自分の意思で『バディ』として共に闘うつもりであることも、理解してもらわなければならない。

 虎の穴へ向かうような気分で、マドカはスイの私室のドアをノックした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 流れ変わったな( ˘ω˘ )
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ