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2 中心は、0(ゼロ)Ⅱ⑦

 翌日。

 マドカは二日ぶりに登校した。



 何人かの友人と軽くSNSで連絡は取っていたが、二日も休むと学校というところは、何かと変わっていたりする。


「よう、九条。体調戻ったみたいだな」


 及川に話しかけられ、うなずく。

 さっそく授業の進み具合なんかを及川に訊き、メモを取るマドカへ、ヤツは何故か微妙な顔をする。


「なあ……お前さ。なんだか最近、妙に勉強頑張ってない? やっぱそれ……、好きな人の、影響?」


 いきなりそんなことを言われ、心の準備がなかったマドカは思わず赤面した。

 及川は突然、すん…と真顔になり、一瞬後、なんとなく憐れむような目になった。


「……そうか。まあその、頑張れ。心から応援はしないけど、邪魔もしないから」


(ん? んんんん?)


 妙な発言だ。

 まあ、美人で頭のいい優等生である三年生の先輩への一方的な恋など、そうとでもいうしかないかもしれない……かな?


(いや教室内の雰囲気も、微妙?)


 自意識過剰かもしれないが。

 どうもその、教室内のあちこち(主に女子)から、チラチラあるいはネトッとした視線が、飛んでくるようなこないような……。


(考えすぎ?)


 内心首を傾げつつ、とりあえずその辺は無視して始業を待つ。



「おい、ナンだよその気色悪いガセ情報(ネタ)は!」


 食堂で及川と昼食をとりながら話を聞き、マドカは思わず叫んだ。


 午前中、どうも雰囲気がヘンなままのような気がするので(極めつけは朝のHRで、母から託ってきたPTA関係の書類を担任へ出しに行った時だ。キャー、とでもいう感じの声にならない声が響き……角野も若干、ヘンな顔をしていた)、ここは情報通の及川に説明してもらおうと、アイスクリームをおごる約束で食堂へ連れてきた。


「俺だって詳しいことはよく知らないけどよ。でもほら、テストの終わった日にお前、階段から転げ落ちて気絶したじゃん? あの時、角野先生(さん)が飛んできてさあ。顔色変えてお前に呼びかけながら、おでこや首筋に手を当てた後、お姫様抱っこしてさっそうと保健室へ運んでったんだよな。何ていうか……スパダリ王子と姫、みたいな雰囲気だったのは確かでさ」


「スパダリ王子と姫……」


「んで。その辺りからクラスの女子が角野×(かける)九条とか言い出して。『×(かける)』って、ソッチ方面の隠語らしいな?」


「『×』……」


 頭痛がしてきた。


「いやいや及川。お前、冷静に考えろ。別に角野先生(さん)、俺だから特別にそうしたったことはなかろーが。そーゆー状況だったらサイコパスでもない限り、自分の担任(クラス)の生徒を気遣って、可能ならお姫様抱っこでも何でもして、一刻も早く保健室へ連れていこうとする方が、むしろフツーじゃないか? もちろん男女関わらずに、さ」


「あー、そうなんだけど……」


 アイスをチミチミかじりながら、及川は上目遣いでこちらを見る。


「俺、角野先生(さん)の『だるいわー』オーラ皆無の状態、あの時初めて見たんだけどさあ。なんちゅーか、恋人の窮地を救う男の顔ってのか、メッチャ男前してた気がするし。よくよく考えたら、お前が突然角野先生(さん)が顧問の理数同好会へ入ったのも、やたらと勉強頑張りだしたのも、同時期かなあって……。つまりこれって、いわゆる、二人は二重の意味で、禁断の恋に陥っているのではと……」


「んなわけあるかっ。鳥肌立つわっ」


 思わずマドカは叫び、周りの目に気付いて口を閉ざす。


 どうやら一年五組には、思いがけないくらい貴腐人がいらっしゃったご様子である。

 やはり、この高校は魔窟……あるいは伏魔殿だったのだ。


「俺は、純度100%の、ノン気だ!」


 怒りを込めて及川へ囁いたが、ヤツは若干ヘラヘラしながらこっちを見ている。

 疑惑?がとけ、どうやらこの状況を楽しむことにしたらしい。

 軽く一発、殴っておいた。

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