表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/580

第七話 部活と依頼?

 授業の終わりを告げるチャイムが鳴る。ただ、今日は授業ではなく、諸々の説明のために授業時間が使われた上に、午前だけであったが。


 お腹が空いたな、なんてことを思いながら帰りの支度をしていると、赤色と金髪が近づいてくる。


 …………あ、今朝のアレか。すっかり忘れてた。


「夜露、今いいか?」

「夜露くん、話がある。少しついてきてくるかい?」


 おい待て引っ張るな。まだイエスともノーとも言っていない……おいこら待てっての。


 夜露の返事を待たずにドナドナしていく2人。クラスメイトからの視線とかは気にならないのだろうか。夜露は気になる。変な目で見られていた。





 屋上の手前あたりの踊り場。ラノベとかではよく見る場所だけど、ここはかなり汚れているし埃っぽいなーなんて事を考えていると、金髪がいきなり頭を下げてくる。


 え、何、怖っ。


「夜露くん、申し訳ないが、君にはボランティア部に入ってもらいたい」


 いやどんだけボランティアしたいんだよ。そんなの自主的なものなんだから、勝手に行動しちまえばいいだろ。


「俺からも頼む。事情は話せねぇけど、俺たちには必要なことなんだ」


 おっといきなり頭を下げるやつが2人登場~。事情を話してくれないと分かるものも分からないの知ってたか? マヌケ。……いやマジに困る。あの部活に何があるんだよ。世界の真理か何かか?


「テストに参加したのは事故だったのかも知れないが、君がいなければ私たちは不合格だったかも知れないんだ。2人がかりではアレを仕留めることは難しかった」


 いや、むしろ僕がいなかった方が簡単に仕留められていただろ。アレ、トリモドキに強化されてたし。


「夜露は話を合わせてくれるだけでいいんだ! 兼部もできるって話だし!」


 違う、そこじゃない。部活に入る=活動に参加する=帰る時間が遅くなる=魔器いじりの時間が減る=デメリットの等式なんだよ! 陽キャ(あなた)には分からないでしょうけどね!!


 しかし、口に出来ていない以上は通じるものも通じない。知ってたか? 夜露(マヌケ)


「答えをくれ、夜露くん。私たちの勝手な事情であることは分かっている。それでも、それでもお願いするっ……!」

「頼む! 夜露!!」


 嫌だ……あんな滅茶苦茶なテストを入部の条件に出す部活なんて嫌だ……!


 夜露は思う。あの部活は絶対に碌でもないと。





「アッハイ」


 しかし、それを口に出せる度胸はなかった。


 NOと言えない日本人、夜露。

 言い訳のしようがない肯定であった。





「まずは自己紹介かな? 私は部長の泉羽(せんば) 伊世(いよ)。2年3組だから、今日はいけない〜とかって連絡はそこまで来てくれ。それと私、魔器研なんだが、3人はどれなんだい?」


 魔特の校舎はデカい。

 生徒数が多いのもあるが、研究施設が併設されていたりもするので、敷地面積もバカみたいに広い。


「……まあ、いいか。部活の説明に移ろう。ここボランティア部は基本的に、生徒や教師……今はまだ手が回っていないが……地域の人々の依頼や悩みごとを解決する部活だ」


 授業を受ける教室が集まっているのが1号館。部室や職員室、研究室があるのが2号館。その他体育館などの施設があるのが3号館。

 それぞれは4階建ての校舎になっている。


「依頼は各階の廊下の依頼BOXに依頼カードを入れてもらっている。入れられた依頼については、依頼者を部室に呼んで話を聞いたり、私たちが独自に動いて解決していく」


 ボランティア部の部室は2号館の1階、職員室と会議室の間にある。

 昔は違ったそうだが、依頼関係で教師陣と会議することもあるので、このような配置に変わったらしい。


「大体はそんな感じだ。細かいことは動きながら説明していくが、ここまでで何か質問はあるかな?」


 360度から迫り来る陽のオーラに蒸発しかけてきたころ、部活の説明が終わる。


 やっと帰れる……腹が減った。


「よし、ならば早速依頼を片付けていこう。依頼BOXオープン!」


 ……?


「なるほどな、今日の依頼はこれだ! “迷子の猫探し”!」


 …え、今日から活動開始なの? 善は急げなの? 他の先輩は? 別の依頼の処理に行ってるの?


「さあチュートリアルクエストに出発だ! 猫を探すぞ!」


 え、ていうか資料これだけ??


 手がかりは写真一枚と依頼者の家にマークがされた地図のみ。

 渡されたそれには、赤い首輪をした茶トラの猫又の子猫が写っている。2週間くらい前から帰っていないらしい。


 猫又は、魔力の影響を強めに受けただけのただの猫。別に驚くほどのものではない。成長し過ぎると殺処分というのもあり得るが……まぁ、魔生物に近いものなので近代ではそう育つことはない。


 ぞろぞろと部室から出ていく部員達。そして、流れに逆らえず一緒に出ていく夜露。



 またしてもNOとは言えない日本人、夜露であった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ