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第百二話 冥界の事情?

 帰宅後、いつものように魔器を弄りながら、トリモドキと話す。


「カイダン……ユウレイナァ」


 そうそう。結局、魂だとか幽霊だとかって何なのさ。


 死後の世界があるのなら、魂なんて存在しない、なんてことはないだろう。

 そして存在しているのなら、何かしらの対処はできるはずだ。


「ソウダナ……ジャアマズ、メイカイニツイテハナスカ」


 冥界……あの世ってことで間違いはないよな?


『ああ。冥界とは、お前らの言うあの世とそう違いはない』


 久々に聞くトリモドキの本気ボイス。

 コロがビビって逃げてしまった。


 ああ、意外と効果あるんだ……てか、なぜその声?


『カタカナ表記だと読みにくいからな。それと、威圧は効かない方がおかしいんだよ。それはさておき、冥界というのはだな、えー……冥王が治める世界の、ことか?』


 なんで曖昧なんだよ。


 トリモドキは、説明に困るというような様子で頭を捻っている。


『冥王ももういい歳だからな……実質的なトップが別にいたりとか、漁夫の利を狙う派閥がいたりとかするんだよ』


 うわ、そっちも面倒そうだな。その辺の話はいいから、とりあえず魂とかについて聞かせてくれよ。


 このままでは冥界のあれこれについて聞くだけで一晩はかかりそうな気がした。

 なのでとりあえず話をせかす。


『いや、それを理解するために冥界の仕組みを知る必要があるんだよ。冥界ってのはざっくり言うと、魂の浄化のための場所なんでな』


 ? よく聞く地獄的な「裁く」場所じゃなく?


『ああ。冥界はただ、魂を集めて輪廻システムに乗せて浄化する。それだけのための場所さ。誰も記録しようとしないせいでいつからそうなってるとかは全然分からないがな』


 冥界には、輪廻システムと呼ばれる浄化装置があるらしい。

 それに魂を乗せて浄化する。そのためだけに冥界は存在するし、そのためだけに冥界の住人も生まれる。


 浄化って?


『まず、魂が何かって話からだな。魂は簡単に言えば、生きたいって思いが詰まった魔力の塊だ』


 そしてその魂は、生きれば生きるほどに他の感情を吸い、性質が変化してしまう。


 へー、魂って魔力なのか。じゃあ魔波は魂のの波動……鼓動? それを操作できるって一体……。


『で、問題はここからだ。その感情を、穢れを吸った魂が肉体を失ったとき、どうなると思う?』


 どうって……その穢れをどこかへ放出しちまうとかか?


『間違いではないな。ただまず、肉体を失った魂はそのまま来世に行く。そしてその時に穢れがあるとエラーが起きて……』


 起きて?


『……とにかくやばい』


 夜露はずっこける。先ほどまではちゃんとしていたのに、いきなりぼんやりした話になった。


 いや、やばいってさ……。


『やばいもんはやばいんだよ。……で、魂については理解できたか?』


 それはなんとなく分かったけど、幽霊はなんなのさ。魂が魔力の塊なら、幽霊もそのまま魔力の塊ってことになるけど。


 多分違うのだろうが、一体何が違うのか。


『あれは肉体の記憶が魂に染みついた結果冥界の迎えを拒否った、意思を持った魂だよ。昔は無理やり連れてってたけど、最近はこっちも忙しいからな……』


 どうやら割と単純なようだ。

 魂は魔力で、幽霊はそこに人間だったころの記憶がついたもの。


 忙しいって?


『…………穢れを吸いすぎて輪廻システムがパンクした。今言えるのはこれだけだ』


 パンクしたのは大惨事ではあるのだろうが、それ以上のことを隠しているような言い方だ。


 ……まあ、今すぐに僕に影響するわけでもないし、別にどうでもいいか。


「ホントテキトウダナ、オマエ」


 気づけばトリモドキの話し方が戻っている。

 コロもそれに安心したのか、戻ってきた。


 幽霊は魔力……じゃあ、それを散らせる道具があれば安心だな。


「チラシタラライセモナニモナクナルケド、ジンドウテキニドウナンダ? ソレ」


 安心しろ。加減なら最近覚えてきたところだ。


「オレガサンドバッグニサレタヤツナ……」



 しかし覚えたといっても、今もたまにサンドバッグが吹き飛ぶ。何も安心できない。

 トリモドキはこれから散らされる幽霊に翼を合わせるのだった。

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