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14 激しい銃撃戦

 まだまだ襲撃は終わらないとばかりに、遠くからもう一台黒いSUVが現れ、猛スピードでこちらに向かって走ってきた。そして僕らの前で急ブレーキをかけて止まると、中から拳銃で武装した四人の男たちが現れる。


「くそっ、増援が来やがった! 早く隠れろ!」


 憑魔は慌ててヤクザたちの乗ってきたセダンの背後に隠れる。刹那、豆まきのように乾いた銃声の雨が辺りに響き渡った。


 篠介はどさくさに紛れて地面に転がっていたヤクザの拳銃を奪い、開けっ放しのフロントドアの裏に隠れた。


「こそこそ隠れてばっかりじゃ面白くねぇ! お返しだこの野郎!」


 篠介はすかさずドアの影から顔を出し、奪った銃を発砲して反撃する。車から出てきたヤクザの一人が、篠介の放った銃弾を受けてのけ反り、倒れた。


「っしゃあ! ざまぁみやがれってんだ!」


 一人仕留めて歓喜のあまり声を上げる篠介。


「おいシノ! あまり出しゃばるな!」


 憑魔がそう注意するも、彼は言うことを聞かずにひたすら相手に向かって撃ちまくる。


「マスターの兄方は、かなり度胸の据わっておる奴みたいだな」


 しかも、さっきまでヤクザをコテンパンに叩きのめしていたウニカが、いつの間にか憑魔の隣にやって来て、銃弾を避けるように車の影に隠れてしゃがみ込んでいた。


「おいウニカ! あいつらを蹴散らすんじゃなかったのかよ!」


「まぁそう慌てるな。切り札はまだ残っておる」


 銃弾の雨が降り注ぐ中、ウニカは地面に転がっていた銃を手に取り、まるで捕まえた昆虫を観察するようにじっとそれを眺めていた。


「ふむ……貴様ら人間は、こんな玩具を武器にしておるのか。……なるほど、どんなものかとは思ったが、構造も動作機構も以外とシンプルなのだな」


「おい、銃なんか見て呑気に感心してる場合かよ! オタクかお前は! 早くしねぇと撃ち殺されるぞ」


 頭を低くしたまま憑魔が叫ぶと、ウニカはふんと鼻を鳴らして持っていた銃を投げ捨て、それからうずくまる憑魔に顔を近付けて、耳元でささやくように問いかけた。


「……なぁマスター、こんな子どもの使う玩具なんかよりももっと強力なものを使ってみたくはないか?」


「はぁ? お前さっきから何言って――」


「いいから、ほれ、我の手を握ってみろ」


 ウニカはそう言って憑魔の前に手を差し出す。その手を見た彼は、思わず反射的に手を引っ込めた。


「……おい、また俺の手を噛むつもりじゃねぇだろうな?」


「噛まんわ! 全く何をビビっておるのだ! マスターは兄方のように度胸が据わっておらんのか⁉︎」


 そうけしかけられ、憑魔はムッとして「分かったよ」と、ウニカの小さな手を強く握った。


 その瞬間――


 ウニカの体が、まるで溶けるように少女の輪郭を失い、ドロドロとした黒い煙へと姿を変えたのである。その煙は膨張しては収縮し、渦を巻いて憑魔の手の中へと吸い込まれてゆく。


 憑魔は一瞬何が起きているのか分からず、思わず目をつむる。差し出した手に、ずしりと重い感触が伝わった。


 そして次に目を開いた時――


 憑魔の手には、一丁の拳銃が握られていた。


 その銃はリヴォルバーで、ボディー全体がメタリックな金色に輝く豪奢なものだった。銃の表面には、ウニカによって憑魔の手の甲に刻まれたものと同じ唐草模様が、全体に蔓延はびこるように彫り込まれている。


「これは……!」


『ふふふ……あの玩具みたいな武器を我ながらに分析して、その構造を真似てみたぞ! 外見はあの玩具とそっくりだが、威力は奴らの持っているものより桁違いなはずだ!』


 煙になって姿を消したはずのウニカの声が、憑魔の脳内に直接語りかけてくる。彼女は姿を消したのではなく、憑魔の手元にある銃に化けてしまっていたのだ。

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