初めての港町
海沿いを南に歩く。
私はどことない不安と圧倒的な期待を合わせ持ちながら歩く。
ステラは脳天気に
「海ですよ!私初めてなんですよ!」とはしゃぎながら先頭を歩く。
正確には、ステラの前を歩くコロネが先頭だけどね。
私の後ろを、イグジが歩く。
コロネのことでは、彼がとても力を尽くしてくれた。
呪い石で縛り付けていたことを謝りたいほどにろ彼には感謝している。
ステラの後ろ髪を束ねる髪留めが赤い光を放つ。
ふふ、と自分の口から笑いが漏れていて驚く。
このところ、私はとても前向きになった。と思う。
ちょっと前まで、自分だけ良ければいいって考えていたのになぁ。
どこぞのお食事娘に影響を受けすぎかもしれない。
堅実主義のイグジ、楽観主義のステラ、悲観主義の私、くらいのバランスでちょうどいいと思うんだけどね。
ステラが野草を嬉しそうに回収しながら、コロネが道ですれ違う旅人たちに撫で回されながら、真面目に歩くイグジに悪戯をしながら、平和な道を進むこと三日半。
いよいよ、次の街が見えてきた。
「地図よりも街が大きいみたいだな」
「港町だからね」
「定期運行船、ありますかね」
町の名前はパラマス。と書いてあるが、パーティの誰も行ったことがない。
よって、事前情報は一切なし。
この街での目的。
船に乗る以前に大きな課題。
「あんたたち、わかってる?今全財産合わせて530レセトくらい。船代がいくらかかるか分からないから、ちゃんと稼がなきゃだめなのよ」
「はーい」と能天気なステラ。
「……」クソ真面目に考え込むイグジ。
ほんと、凸凹なパーティね。
じゃ、ここはお姉さんも一肌脱ぎましょう。
入り口は自由に出入りができるタイプ。
こういう街は、決まって商業の交流拠点なのよね。
ガヤガヤと賑やかなマーケットが広がる区域に入ると、この前の街で攫われたことも忘れて、末っ子二人がはしゃぎ出す。
「あ、魚!魚が売ってますよ!」
確かに内陸では魚はあまり見かけない。これだけ色々な魚が並んでいるとワクワクもするよね。
その中にはこの前マスターが料理してくれたパラツィーもいた。
ーあれ、とんでもなく辛かったけど美味しかったわよね。
今思い出しても、鮮烈な料理だった。
「あ、コロネだめ!触らない!」
おーおー、お姉さんぶっちゃって。
「ほらほら、買い物はあとあと。まずは宿と食事場所を確認するわよ」
「はーい」
言うと素直に宿探しを始めるのだった。