この街での最後の仕事
「オイオイ、何を恨めしそうな顔して。酒の場だぞ?楽しめよ」
「はい、テラスの串焼きね」
セルテがタイミングよく、一皿運んできた。
皿と一緒に、一枚の紙を置いて行く。
それを見て、オヤジの顔から血の気が引いて行く。
“人の仲間に手を出す外道、この悪事を許すのか?”
そう見出しをつけて始まるチラシには、オヤジの顔が載っている。その内容は、ゆすりたかり、強盗、窃盗、放火、殺人まで全て調べ上げられていた。
「酒屋の情報とうちのメンバーの能力を舐めるなよ?」
振り返ったセルテの手のひらでは黒い霧が怪しく漂っていた。
「舐めるのはどっちだ?俺たち門番敵に回すと、街から出られず明日には川に浮いてるぞ」
薄気味悪い笑顔を浮かべ、今一度主導権をとりにきた。
「おー怖いな。確かに強ーいお仲間さんが何人かいるみたいだよな」
「それってあの人とあの人ですよね?」
突然、オヤジのすぐ横でステラが話しかける。
「私、物覚えは良いんですよ。あの人は初日にあなたと一緒に門に立っていました。その隣の人は…あの人と一緒にこの子のことすごく入り口で可愛がってくれていましたから」
にこりと微笑むステラだが、目は全く笑っていない。普段の彼女を知っているからこそ、人形のような無機質な笑いに寒気を感じる。
「…で、そのあとこの子がいなくなって。すごく、すごく心配で…その間もあなた達の来店の周期を記憶していました。四日おきに来ないことがわかったので、今度は同じ周期で来店する人を探って、来店の時間とメンバーを特定して、私の知る限り八人の人がお店に出入りしていますね」
もはや執念だった。ステラの記憶を頼りに、今度は俺がそいつらの行動を確認していく。なんならセルテが呪術を使って家族構成や住む場所まで特定していく。その結果、グルになっているメンバー全てを把握するに至ったのだ。
ーーかたん
と、セルテが隣に酒を持って腰掛けた。
「でさ。私たちも別にアンタら皆殺しにしたいわけじゃないのよ。うちの子を懲らしめた分の反省をしてもらうことと、私らにこれ以上関わらないで、この街から出るまで見逃してもらえない?」
「…で、何すりゃ良い?」
「そうね、この子のために旅費の援助、は要らないわね。汚い金で旅したくないわ」
「じゃあ、この場にいる全客の、ここの飯代奢ってくれ」
そんなもんでいいのか?と言わんばかりの顔をするオヤジと門番仲間達。
「ところで、たまたまなんだけど、今日は特別定価販売していてね。いつもの何倍も高くなっちゃうからみんな困ってたのよ」
ニヤリと悪い笑顔を浮かべるセルテ。
ーおい、じゃあミートボール!
ーこっちはコックス酒、樽ごと頼むわ!
いきなり活気付く店内。
「あと、今日は偶然、この町で謎の盗賊の被害に遭った人たちが集まっているので、治安を支える方々として、よかったらじっくり、話を聞いてあげてください。よろしくお願いしますね」
俺たちの仕事はこれでおしまいだ。
カクタスの店は、過去最高の売り上げを記録するだろう。
この街に新しく来る旅人達に、良い思いをさせてやってくれよな。




