俺たちの喜び
セルテの付与魔術で極端に軽くなったドアは、易々と二枚並べて持ち上げることができた。この手のドアは重さと開く向きで早々に開かないようにする役割を持っている。そのため、軽ければ開けるも閉めるもそれほど難しくはないのだ。
慎重に周囲の状況を確認して、索敵を行う。
…いないな。
時間はあまりないだろう。
野盗のところで一人捕らえているし、時間を優先して後処理も全くしていない。今ここに、正体はわからないにしても誰かがいることが予測できる人間は多いはずだ。
手早く、音を立てずに現場を離れる。
明かりもなく、土地勘がない街の中を、少し遠回りして宿に戻った。
「ああ、コロネ!」
宿に戻るなり、感動の再会が繰り返される。
今晩はうまくいきすぎるほどうまくいった。だろう。
二度の侵入や制圧、
セルテもぐったりと疲れた表情を浮かべる。
「ん?セルテー?」
思い出したが、彼女は今、俺の腕の怪我を半分受け持っているのだ。
つまり、結構重症のはず…。
「ちょっと休まないと、あと少しで夜が明けちゃうわね」
そう言って、彼女は部屋に入った。
だが、その足取りはとても軽やかだった。
俺も休まないとな。
そう思い、ステラはどうするのかと振り返ると…俺の部屋のソファに沈み込むように、大好きな仲間を抱きしめながら幸せな笑顔を浮かべ、寝息を立てていた。
その手はコロネを掴んで離す気配がない。
コロネも別にという表情で、ひたすら頬を舐め続けている。
俺も、俺の怪我や病気がセルテにつながる以上、ちゃんと休まなければならない。
二人の部屋に連れて行くには、セルテが寝ているところに侵入するわけにはいかないし、俺の部屋で寝るにはなぁ。ステラの寝場所を考える。
首の後ろに手を回し、膝を立てて抱え上げる。
…軽いよな。
本人には言ってはいけないだろうことを考えながら、赤い尾の相棒を抱きしめた少女を、俺の布団に運ぶ。毛布を掛ける。
「ふう、流石にちょっと…疲れたよな」
そう言って自分はソファに座ると、俺の意識はすぐに微睡の淵に落ちていく。
その夢見は最高に幸せなものだった。気がする。
闇の曜日の月の出ていない夜。
俺たち全員が、大満足を感じていた。




