秘密の探索
倉庫は本当に裏通りに入ってすぐのところにあった。
赤い二枚ドアはセルテが燃やそうとするのを静止して、セルテの付与魔術で極限まで軽くして、俺が力技で鍵穴ごとずらして開けた。
もし間違えならちゃんと元に戻して証拠なく立ち去らないと、俺たちゃ縛首か奴隷落ち、良くてお尋ね者だろうからな。
そっと中に入ると、見張りがいる気がしない。
…だが、警戒に越したことはないだろう。
ドアを開けたすぐ目の前に、早速大きな布をかけられた荷物がまとまっている。
そっとめくる…食料品だ。缶詰めや日持ちのする粉、穀草の種が目についた。
セルテは右をまわり、壁沿いの棚を確認する。…首を横に振る。ステラは俺たちを掻き分けるようにして、正面の山の裏に回り込んでいた。
荷物の中、コロネの気配を懸命に探す。
一つ一つの荷物を動かしながら、慎重に。
だが、なかなか見つからない。もうすぐ曜日が変わってしまう。
その時だった。
「…コロネ?」
ステラが何かに気づいた。
ーーきゅん
俺の左奥で探していたステラの近くから、微かにだが、確かに聞き覚えのある声が聞こえる。
「コロネ!」
ステラが掻き分けるようにして声の主を探す。
ーーきゅん
声の主もよくわかっている。きっと一番会いたかった人物のはずだ。
またいくつか荷物を動かすと、ついに姿が見えた。
小さな籠に仕舞われ、周りを押しかためられ、きっと息苦しかっただろう。
籠を俺が力技でぶち壊す。左足でカゴを押さえつけ、右手で引きちぎるように引っ張ると、想像以上に簡単に壊れてしまった。
…いや、きっと、俺もコロネのためならいつも以上に力が入ってしまう。つまりそういうことなのだろう。
残念ながら、開いた籠から飛び出したコロネは俺ではなく、白髪の少女に飛びついた。
「コロネ!」
ステラの目には涙が浮かんでいる。
コロネを強く抱きしめ座り込み、離そうとしない。
もう離してなるものか、とその腕を締め上げるので、コロネがかなり苦しそうだ。
この数日の焦燥は誰が見ても明らかなものだった。それほどステラにとってコロネは大切な家族なのだ。
…で、だ。
よかったよかった、で済めば良いが、現実はそう甘くない。この街の闇に当たる組織。表立ってぶつかりたい相手ではないのだ。むしろ、素通りしたことにできるのなら、その方がずっと良い。
「ステラ、ここから出るわよ」
周囲を警戒していたセルテが、現実の空間に我々を引き戻す。
「…はい」
一瞬の間の後、ステラも気持ちを切り替えた様子。
湿った目の周りをぐいと拭き取ると、新しい羽織着のフードにコロネを収め、立ち上がったのだった。