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ひたむきステラと星の竜  作者: KEY
第五章 イグジの章 水竜への旅路
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秘密の探索

倉庫は本当に裏通りに入ってすぐのところにあった。


赤い二枚ドアはセルテが燃やそうとするのを静止して、セルテの付与魔術で極限まで軽くして、俺が力技で鍵穴ごとずらして開けた。


もし間違えならちゃんと元に戻して証拠なく立ち去らないと、俺たちゃ縛首か奴隷落ち、良くてお尋ね者だろうからな。


そっと中に入ると、見張りがいる気がしない。

…だが、警戒に越したことはないだろう。


ドアを開けたすぐ目の前に、早速大きな布をかけられた荷物がまとまっている。


そっとめくる…食料品だ。缶詰めや日持ちのする粉、穀草の種が目についた。


セルテは右をまわり、壁沿いの棚を確認する。…首を横に振る。ステラは俺たちを掻き分けるようにして、正面の山の裏に回り込んでいた。



荷物の中、コロネの気配を懸命に探す。

一つ一つの荷物を動かしながら、慎重に。


だが、なかなか見つからない。もうすぐ曜日が変わってしまう。


その時だった。


「…コロネ?」

ステラが何かに気づいた。


ーーきゅん


俺の左奥で探していたステラの近くから、微かにだが、確かに聞き覚えのある声が聞こえる。


「コロネ!」


ステラが掻き分けるようにして声の主を探す。


ーーきゅん


声の主もよくわかっている。きっと一番会いたかった人物のはずだ。

またいくつか荷物を動かすと、ついに姿が見えた。

小さな籠に仕舞われ、周りを押しかためられ、きっと息苦しかっただろう。


籠を俺が力技でぶち壊す。左足でカゴを押さえつけ、右手で引きちぎるように引っ張ると、想像以上に簡単に壊れてしまった。

…いや、きっと、俺もコロネのためならいつも以上に力が入ってしまう。つまりそういうことなのだろう。




残念ながら、開いた籠から飛び出したコロネは俺ではなく、白髪の少女に飛びついた。

「コロネ!」


ステラの目には涙が浮かんでいる。


コロネを強く抱きしめ座り込み、離そうとしない。

もう離してなるものか、とその腕を締め上げるので、コロネがかなり苦しそうだ。


この数日の焦燥は誰が見ても明らかなものだった。それほどステラにとってコロネは大切な家族なのだ。



…で、だ。

よかったよかった、で済めば良いが、現実はそう甘くない。この街の闇に当たる組織。表立ってぶつかりたい相手ではないのだ。むしろ、素通りしたことにできるのなら、その方がずっと良い。


「ステラ、ここから出るわよ」

周囲を警戒していたセルテが、現実の空間に我々を引き戻す。


「…はい」


一瞬の間の後、ステラも気持ちを切り替えた様子。

湿った目の周りをぐいと拭き取ると、新しい羽織着のフードにコロネを収め、立ち上がったのだった。

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