ステラのルーツ
では、今度は私の番。
でもあんな凄技の後じゃ、何しても残念さが出ちゃう!
「私は大したことできないんですけど…軽弓と付与魔術の高速詠唱?と知識と経験で採集を中心にしています」
「ああ、食材採集、報酬は美味しい食事と書いてあったな」
ーぶふっ
あ!いま誰か笑ったな!
「はい、私北の方の村で育ったんですけど、父が巨人族の放浪の民で…」
「何!?」
周りの常連さんたちがびっくりしてこちらを見た。
「あ、私は拾い子みたいで、血は繋がってないんですよ?」
「いや、そうじゃなくて、巨人族の放浪民って伝説級だからな、まさかその身内に出会うとはな…」
「で、母は星の巫女をしていて」
「何!?」
またびっくりしていたのは新しい常連のおじいさん。名前はエンバックさんということをさっき知った。
「あ、コレ、セルテさんにあまり言うなって言われてたんですけど…」
ポロッと言ってしまったことに気づいてセルテさんの方を見ると、ものすごいしかめっ面でこちらを見ていた。
で、イグジさんはというと…
「星の巫女ってそれもまた希少だな」
「村では普通でしたからピンとこないですけどね」
「ご存知かもしれませんが、星の巫女を生む『星の民の村』はいくつか変わった術を使います。さっき付与魔術の高速詠唱?って言ったのも、私の使う力が他の人とは違っているからで…」
光の付与魔術をやってみせた。
「うん、普通の詠唱呪文とは思念の力の質も呪文も違うね。だいぶ詠唱がコンパクトな割に出力が高い。そのくせ消費が少ないみたいだ」
「イグジさんの射出魔術は詠唱していませんでしたよね」
「あれは俺の特性が偏っていることと、威力は最低限度、そこに刃の力を乗せて、詠唱を意識内で完結させているんだ」
ってことは、見えないところから近づいて狙われたらおしまい…おっそろしい!
「人並みの体力と魔力と魔術の腕しかないですけど、しかも付与魔術ばっかりですけど、弓矢も威力は全然ないんですけど、なぜか命中率は異常に高いしよくわかんないけどすごく遠いところまで的中します」
自分でもなぜかわからないからこうとしか言えないし、自分で聞いても本当に売り込む気があるのかというほど胡散臭い。果たして信用してもらえるのかなぁ。
「それに、父からは旅の知識とか料理法とか血抜きの仕方とか解体とか教えてもらいました」
自分でもどうかと思うが、ここまで一気に捲し立てるように伝えてみた。
「…どうですか?」
恐る恐る、視線を下から前へ。
「明日はどこにいつ集合する?」
当たり前のように、彼は受け入れてくれていた。
暫定とはいえ、パーティになったのだ。
「いつでもいいですよ」
あ、そうだ。
「よかったらここの上にある私の部屋で泊まりますか?」
スパーーーーーーン!
だいぶ遠くから飛んできたセルテさんの平手が、脳天に突き刺さったのだった。