違和感の正体
夜はステラとセルテを宿に置き、俺一人、外を出歩く。
セルテがいないと明かりひとつとっても難儀する。
松明を用意して、街の外れまで来ては、やはり関係なかったと折り返し、雷の曜日から光の曜日へと残酷にも移り変わる。
これは何か、大きな見落としがあるのかもしれない。
ステラはこういう時、発想の転換がうまい。俺のような頭の硬い奴には、それだけで羨ましさを感じられてしまう。
コロネは俺が連れ歩いたから、危険な目に遭っているんだ。
この失態、俺が取り戻さなければコロネに謝りきれない。
そう思って街中を歩くほど、答えは遠のいている気がする。
ーカラン…
宿に入ると、ステラが忙しなくうろうろとしている。
「あ、おかえりなさい…」
少しフラフラしているステラを支えようと手を伸ばす。
とっさに手を伸ばしたが、負傷した左手を伸ばしてしまった。
「おっと」
とりあえずステラの顔色が悪い。
…とセルテが腕組みをしながら出てきた。セルテまで顔色が悪かった。
二人とも昼まで休めと言ってしまった手前、俺も休まなければならなくなった。
何か。
何か見落としがあるはずだ。
焦っても時間は過ぎるばかりで、気がつけば日は高く登ってきていた。
カクタスには後で礼を言うとして、眠気で回らない頭に活をいれるため、俺は井戸から水を汲み上げた。
軽く水を浴びた後、もう一度街に出ようかとすると、またセルテに出会う。
少し寒そうにしていた彼女に声をかけるが、だいぶ疲れているようだった。
結局、運命の光の曜日も、酒場の始まるその時まで、何ひとつヒントが得られないのだった。
酒場でのセルテは、見事に切り替えて対応している。
それに対して、失敗を重ねるステラ。
店主のカクタスも、事情をわかってくれているから特に咎めることもなく、少し早めに業務から抜いてくれた。
日付が変わるまであと数刻しかない。
と、その時だった。
先を急いで宿に戻ろうとしたからか、看板をしまおうとするセルテとぶつかってしまった。
「んっーーーー」
なんとも、声にならない声を浮かべ、セルテがかがみ込んだ。
「どうした?大丈夫か?」
右手で腕を掴み、セルテを引き上げた時、セルテが声を上げた。
「いったぁ…!」
なんだ?何かおかしくないか?
俺はセルテの袖を捲り、驚いた。
セルテの左腕に、まるで矢で貫かれたような丸い跡がついていた。穴が開いているわけではないが、その周りには血が滲んでいたのだった。